2019/09/24

米国eHealthジャーナル 第4号

VR技術が痛みの緩和に寄与

ジャーナル第04号, 疼痛管理, ウェアラブル, 研究・調査, XR (VR/AR/MR)技術

 
 

Cedars-Sinaiの研究

医療センターの
Cedars-Sinai Medical Centerは8月14日、入院患者の疼痛緩和に仮想現実(VR)技術が有用である可能性を示唆する研究結果を発表した。
同研究結果は同日付でPLOS ONEに掲載された。 
 

 


VRの有効性を評価する無作為化試験では、1~10で疼痛の程度を評価する指標において、試験参加24時間前に少なくともスコアが3以上だった、整形外科や消化器疾患、癌などさまざまな症状で同医療センターに入院中の被験者120名を、VRデバイス群と、テレビ視聴群に半数ずつ割り付け、1日数回に渡って痛みのスコアを調査した。
 

 

VRデバイス群は、ゴーグル型のヘッドセットであるSamsungの「Gear VR」を 1日3回、また突発的な痛みの発症に応じて装着するよう指示された。VRデバイスは、イルカと一緒に泳ぐコンテンツなど、リラックスや瞑想を促す10分間のVR体験をユーザに提供する。一方のテレビ視聴群は、部屋に設置されたテレビで、ヨガや瞑想などリラックスをもたらすコンテンツを提供するウェルネス番組を視聴するよう指示された。VRデバイス装着群と同様に、1日3回10分間の番組視聴および、また突発的な痛みの発症に応じて視聴した。
 

結果、3日後にVRデバイス装着群では痛みのスコアが平均で1.7ポイント減少し、統計的に有意な改善が示された。また、ベースラインの痛みのスコアが7以上であった、重度の痛みを抱えるサブグループを対象とした解析では、テレビ視聴群と比較してVRデバイス群で平均でスコアが3ポイント減少したことが示された。

疼痛管理にしばしば用いられるオピオイドは、全米で規制物質利用障害(SUD)を引き起こしている。公衆衛生の向上を掲げる連邦機関であるCDC(Centers for Disease Control and Prevention)によると、2017年だけでも7万237名がオピオイド過剰摂取で死亡している。
2018年10月には、米国で深刻な社会問題になっているオピオイド中毒の蔓延に歯止めをかけることを目的とする「Substance Use-Disorder Prevention that Promotes Opioid Recovery and Treatment for Patients and Communities Act」が近年ではめずらしく超党派合意により成立、向こう5年間に渡り16床以上の中毒治療施設における入院ケアへの連邦支出制限の一部撤廃や、メディケイドおよびメディケアにおけるSUD治療を目的としたテレヘルス利用の拡大などが定められた。しかしながら、官民での取り組みが行われているものの、オピオイド危機は以前として収束していない。重度の痛みを抱える患者において特に顕著にスコアを減少させたVRデバイスは、オピオイド危機問題解決の一助となる可能性がある。

 

(了)

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