2019/10/22

米国eHealthジャーナル 第6号

NIA、Brown University主導の研究共同体にグラント提供

ジャーナル第06号, 患者データ・疾病リスク分析

 
 

リアルワールドでのAD患者ケア研究に特化 

老化研究に特化する国立衛生研究所(NIH)傘下の
National Institute on Aging(NIA)は9月10日、リアルワールドにおけるアルツハイマー型認知症/関連認知症(AD/ADRD)患者ケア介入に関する研究の推進に向け、「Imbedded Pragmatic AD/ADRD Clinical Trials Collaboratory(以下、IMPACT)」と呼ばれる研究インキュベーターに5年間で5,340万ドルのグラントを提供すると発表した。

              

NIA IMPACT COLLABORATORY


IMPACTは、Brown Universityと、高齢者向けケアの提供や老化研究を行うHarvard Medical School傘下の非営利機関、Hebrew Senior Lifeが主導する。

IMPACTは、ヘルスケアシステムと提携して大規模臨床研究を展開するNIHの「Health Care Systems Research Collaboratory」をモデルとしてPragmatic Clinical Trial(PCT)を展開するもので、病院や家庭、介護施設などで実施されるリアルワールド臨床試験の開発を促進すると共に、その実務に長けた専門家の育成に取り組む。

 

PCTは、日常臨床にできるだけ近い条件で比較試験を実施してエビデンスを構築する方法の一つである。

従来、結果の妥当性や正確性が保証された「質の高いエビデンス」は、主にランダム化比較試験 (RCT)からもたらされ、RCTの結果は医薬品や医療機器の承認申請に重要な役割を果たしてきた。

しかし、RCTは日常と異なる実験的な条件下で、かつ参加意欲のある患者に対して行われることが多いため、一般化可能性や代表性といった点において結果の妥当性が不十分となる懸念もある。こういった理由からPCTの可能性を探る動きが盛んになりつつある。

デジタル技術の利用により、リアルワールドの様々なケアセッティングでデータを収集、大規模かつ患者の多様性を反映することで、エビデンス・ギャップに対応するとともに治療選択に洞察を提供することが期待されている。

(出典)National Institute on Aging


IMPACTは30以上の研究機関の専門家からなる8つのワーキンググループを通じ、2つの主要な目標に向けて研究を進める。

その1つは、医薬品を用いない認知症患者への介入パイロット・プログラム最大40件に対する資金と助言の提供、もう1つは、ADおよび認知症患者へのケアの導入と評価に関するベストプラクティスの開発と研究コミュニティとの共有となっている。
パイロット・プログラムは、IMPACTに参加するヘルスケアシステムで実施され、そこで得られたデータを連邦政府出資の大規模臨床試験のために活用する。

 

(了)


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