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心房細動未診断患者をターゲット
心電図モニタリングソリューションの「ZIO Patch」を販売するカリフォルニア州サンフランシスコ拠点のiRhythm Technologies(以下、iRhythm)は9月4日、心房細動(AFib)のスクリーニング、診断および管理手法を向上させるソリューションの開発を目的として、Alphabet傘下のライフサイエンス研究企業、Verily Life Sciences(以下、Verily)と提携したことを明らかにした。
本合意の下iRhythmは、契約一時金として500万ドル、開発・規制面でのマイルストーン達成に応じて最大で1,275万ドルをVerilyに支払う。またiRhythmは同日、引受会社らを介して1億株のiRhythm普通株式の公募(Secondary Public Offering)を実施すると発表した。J.P. MorganとMorgan Stanleyが共同で事務幹事会社を務める。
不整脈の一種であるAFibは、4つに分かれた心臓の「部屋」のうち、心房と呼ばれる上の2つの部屋で生じた異常な電気的興奮により起こる。心房が有効に収縮しないために心房内に血液がうっ滞して血栓ができやすくなり、やがて心室からはがれて動脈を通じ脳血管に運ばれた血栓が脳梗塞の原因となる。また、AFibに伴う頻脈が続くことで心室のポンプ機能が低下し、最終的に心不全に至ることもある。
AFibは適切な診断と治療を必要とするが、未診断患者が多いことが複数の研究で示唆されている。AFibと診断されたことはないが、リスクは高いと考えられる患者の胸部に小型の心電図モニタリング機器を植え込み長期間にわたって観察した結果、ほぼ3人に1人でAFibが検出されたとするColumbia Universityの研究結果は、2017年8月26日付でJAMA Cardiologyオンライン版に掲載された。
また、国立衛生研究所(NIH)傘下のNational Heart, Lung, and Blood Institute(NHLBI)とBoston Universityの共同研究によると、AFib起因性の脳梗塞を経験した患者の20%は、脳梗塞発症時もしくはその直後までAFibが起きていることを知らなかった。iRhythmは、米国のAFibの高リスク人口を約1,000万人と見積もっている。
(出典)iRhythm Technologies
上市済みの心電図モニタリングデバイスとしては、Appleの「Apple Watch」や6誘導心電図を計測可能なAliveCorの「KardiaMobile 6L」がある。より幅広い人口層を対象とするApple Watchとは異なり、iRhythmでは専ら、AFibのリスク因子を有するAFib未診断患者にターゲットとして、AI基盤の不整脈診断におけるiRhythmの専門性と、Verilyの先進ヘルスケアデータ解析技術を持ち寄り、新規ソリューションの開発を目指す。
iRhythmは、AFib未診断患者を同定する方法を明らかにしていないが、CNBCによると、Aetnaとの既存の提携関係など、民間保険会社との提携を通じて実施される可能性がある。
(了)
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