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Queen Mary University of Londonの研究
Queen Mary University of Londonの研究班は9月26日、人工知能(AI)技術を利用した画像解析が、心不全リスクのある患者の早期発見や心不全治療薬の開発に寄与する可能性を示唆する研究結果を発表した。
本研究には、Wellcome Trustと英心臓病財団(British Heart Foundation)が資金の一部を提供した。研究結果はCirculation誌9月25日号オンライン版にも掲載された。
これまでの研究において、心臓のサイズや機能の違いに遺伝子が影響していることは知られていたが、その程度は明らかになっていなかった。
また、心血管疾患の診断、管理、リスクの層別化に重要な役割を果たす左心室(LV)画像で示される表現型の遺伝学的基盤についても、解明はされていなかった。
今回研究班は、UK Biobankの参加者のうち、心筋梗塞や心不全を患っていない1万6,923名を対象として心臓のMRI画像をAIを使って分析した。
英国の長期大規模バイオバンクであるUK Biobankは、任意参加の50万人について過去10年間のヘルスケアデータと生物学的サンプルを保有している。研究班は今回、LV拡張末期容積(LVEDV)、LV収縮末期容積(LVESV)、LV 1回拍出量(LVSV )、LV駆出率(LVEF)、LV心筋重量(LVM)、およびLV心筋重量対拡張末期容積比(LVMVR)といったLVの6つのパラメーターのゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、さらに多民族を対象とした動脈硬化研究(MESA)を利用して再現分析を行った。
その結果、左心室のサイズと機能に関連するヒトゲノムの14の遺伝子座が同定され、各遺伝子座には心腔の初期発達と心筋の収縮を調節する遺伝子が含まれていることが明らかになった。
また、心臓の主要なポンプ室である左心室のサイズと機能のばらつきの22~39%が遺伝的要因の影響を受けていることを発見した。左心室の拡大およびポンプ機能の低下は、心不全につながる可能性があるという。
Queen Mary University of Londonの研究者らは今回の発見について、疾患リスクや治療の予後にとって重要となるLV表現型の遺伝的構造の理解を深めただけでなく、LVリモデリングのための新規治療標的としての候補遺伝子を示唆するものとなったと結論した。
(了)
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