2019/06/25

米国eHealthジャーナル試読版

「スマート・インジェスタブル」で服薬遵守率を大幅に改善

デジタルセラピューティクス

ウィスコンシン州のFroedtert & MCW

ウィスコンシン州ミルウォーキー拠点の地域ヘルスケア・ネットワークであるThe Froedtert & The Medical College of Wisconsin(以下Froedtert & MCW)は4月1日、患者の服薬遵守向上を目的としてカリフォルニア州レッドウッド拠点のProteus Digital Healthと提携したことを明らかにした。

Proteusは、薬物摂取追跡を行う「スマート・インジェスタブル」を手掛けている。

同社の技術を利用したFDA承認薬としては、大塚製薬のデジタルメディスンであるAbilify MyCiteがある。Abilify MyCiteは、大塚製薬の統合失調症治療薬Abilifyの錠剤に摂取可能な極小センサーを組み込んだもので、内蔵されたセンサーは服用されると胃でシグナルを発する。それを患者の体に貼ったパッチ型検出器で拾って記録する仕組みだ。

ほかにも患者の活動や運動などのデータを記録し、スマートフォンの専用アプリに送信する。患者が同意すれば、これらデータをウェブポータルで医療従事者や介護者と共有することもできる。

Froedtert & MCWは今回の提携を通じて、糖尿病患者、高血圧症患者、C型肝炎患者などの一部の慢性疾患患者を対象としてスマート・インジェスタブルによる服薬遵守向上を目指す。Abilify MyCiteと同様に、パッチ型検出器とスマートフォンの専用アプリ、また医療従事者向けのダッシュボードを伴い、医師らは遠隔から患者の服薬状況をモニタリングすることが可能だ。

スマート・インジェスタブルは、服用状況と医薬品効果をモニタリングし、より少ない用量の医薬品使用で優れた健康アウトカムを導くケアプランを医師が策定するのを可能にする。

現在130名の患者がFroedtert & MCWのプログラムに参加しており、これまでに2万回の医薬品服用がデータとして記録されている。スマート・インジェスタブル由来データは、患者の電子医療記録(EHR)に統合されるため、個別化されコーディネートされたケアの提供が可能になるという。Froedtert & MCWによると、プログラム開始からの13ヵ月間における、C型肝炎患者の服薬遵守率は98%で、全ての患者でウィルス量の制御が達成された。2型糖尿病患者、高血圧症患者、高脂血症患者の服薬遵守率は91%だった。

Proteusは2018年1月にも、経口デジタル抗癌剤のケアモデル構築を目的に、ミネアポリス拠点の非営利ヘルスシステムFairview Health ServicesおよびUniversity of Minnesotaの医学部と提携している。Fairview Health Servicesでは、ステージ3あるいは4の結腸直腸癌患者を対象に、化学療法剤のカペシタビン含有のデジタル抗癌剤投与を開始した。

スマート・インジェスタブルにより、患者が化学療法剤を服用した時間や用量、薬剤の種類といった情報や、患者の平常時の健康データを安全に記録し、患者の同意を得て医師や薬剤師、ケア提供者との共有を可能にする。それにより、外来診療のみでは把握しきれない患者の状態を理解し、さらに医師が治療に積極的に関与することができ、服薬遵守向上や入院回避、治療効果の向上につながるとProteusは考える。Proteusはデジタル抗癌剤を用いて癌患者からリアルワールド・データを集め、デジタル経口抗腫瘍治療レジストリを構築する。

スマート・インジェスタブルを搭載した錠剤

(了)


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