2019/11/26

米国eHealthジャーナル 第8号

Facebook、メンタルヘルス問題の解決を支援する新機能を発表

ジャーナル第08号, 精神疾患, 医療コミュニケーション支援, Facebook

オンライン上ではより率直な対話が可能

Facebookは10月10日、世界精神保健デー(World Mental Health Day)にちなみ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「Facebook」や、ユーザー同士がリアルタイムにメッセージをやり取りするためのアプリ、「Messenger」向けに、メンタルヘルス問題を抱えるユーザーが信頼できる仲間に悩みを打ち明けるのを支援する、「Let’s Talk」と呼ばれる新機能をリリースしたことを明らかにした。 

1992年以来、毎年10月10日が世界精神保健デーと定められ、世界精神保健連盟(WFMH)や世界保健機構(WHO)が中心となって、メンタルヘルスについての意識啓発と偏見をなくすための活動が行われている。

Let’s Talkでは、Facebook やMessengerのカメラで撮影した写真に専用の「フィルター」を適応して、メッセージ付きの写真や、Messengerでのメッセージ・スタンプ送付などを介して対話に招待し、精神的な悩みを抱えているかもしれない友人に話す機会を提供しようとする。Facebookが英国、米国、オーストラリアで実施した調査では、深刻もしくは感情的な問題については、対面よりもオンライン上でメッセージをやり取りするほうが、よりオープンな対話を促進することが示唆されている。回答者の80%は、メッセージでは完全に率直な会話ができると答えている。

同社はまた、言葉がみつからない場合でも対話を可能にする16種類のMessenger向けスタンプをリリースした。Facebookによると、これらのスタンプが利用されるたびに、総額100万ドルに到達するまでFacebookはメンタルヘルス組織に1ドルの寄付を行う

Messenger向けステッカー

米IT大手のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)によるヘルスケア市場参入は、常に大きな話題を提供している。Facebookも過去1年間でいくつかのイニシアチブを開始した。同社は2019年2月、米国で献血プログラムを開始する計画を明らかにした。この献血プログラムは2017年にインドで提供が開始されたFacebookの新しい機能で、血液ドナーと医療機関をマッチングさせるもの。Facebook上で、血液ドナーであることを明示しているユーザーは、必要に応じて病院や血液バンクから通知を受ける。同プログラムはパキスタン、ブラジル、バングラディシュでも展開され、これまでに3,500万人以上のFacebookユーザーが血液ドナー登録を行った。

血液ドナーと医療機関をマッチング

Facebook は2019年5月には、Harvard T.H. Chan School of Public Health、UNICEF、World Bankなどを含む複数組織との協力の下で、3種類の疾病マップをリリースしている。

同社は特にメンタルヘルス問題の解決・支援に積極的である。2017年11月には人工知能(AI)を利用したパターン認識により、Facebook上での近況報告やコメント、動画などで利用された言語やコンテンツから、自殺リスクの高いユーザーを特定する取り組みを開始している。この「AIによる自動巡回」は、自傷行為に関する専門家を含むコミュニティ・リレーションチームが緊急時に適宜対応するのを可能にする。Facebookによると、状況に応じて警察機関へ通報を行うこともある。

この自殺予防・通報のシステムは、実際に救命ができているという評価の反面、プライバシー保護が十分でないとの批判もある。Facebookでは同システムを米国以外の諸国でも展開したい考えだが、「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、GDPR)」によりデータ保護要件が厳格な欧州においては実施しない計画だ。

Facebookからの通報で自殺を予防

Facebookでは、自殺念慮を含むさまざまなメンタルヘルス問題に対する支援リソースを提供している。ユーザーは、FacebookやMessengerを利用してカウンセラーにメッセージを送信することが可能だ。同社によると、提携関係にあるヘルプラインの全スレッドにおいて、メンタルヘルスカウンセラーやクライシスカウンセラーとしてトレーニングを受けたボランティアやスタッフが、ユーザーのメッセージに無償で対応する。スレッドの内容が公開されることはない。クライシスサポートを提供する「National Suicide Prevention Lifeline」と「Crisis Text Line」は米国のみの対応で、秘密は厳守される。そのほか、
摂食障害に苦しむ人やその家族を支援する「National Eating Disorders Association」、子供の薬物使用で悩む保護者を支援する「Partnership for Drug-Free Kids」がカウンセリングを提供している。「Crisis Text Line」は24時間年中無休で、それ以外の支援リソースは、月~金曜日までのすべてのメッセージに対応する。

(了)


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