2019/12/10

米国eHealthジャーナル 第9号

Livongo、Blue KCとの契約を拡大

Livongo, デジタルセラピューティクス, ジャーナル第09号, テレヘルス

720以上の組織が同社の疾病管理プログラムを導入

慢性疾患患者向けにスマホアプリを利用した疾病管理プログラムを提供するデジタルヘルス企業のLivongo Health(以下、Livongo)は10月17日、Blue Cross and Blue Shield of Kansas City(以下、Blue KC)との既存契約を拡大し、Blue KCの企業顧客にLivongoのサービスを提供することでBlue KCと合意したと発表した。

Blue KCはミズーリ州最大の非営利健康保険会社で、何百万人もの人々に健康保険プランを提供している。今回の合意に基づきLivongoは、従業員のためにBlue KCからグループ保険プランを購入する、Blue KCの「フル・インシュアード」の全顧客(Fully-Insured:保険提供における財務リスクを負うのは、顧客である雇用主ではなくプランを提供する保険会社)に対して、同社の糖尿病患者向けデジタル・プログラムを提供する。Livongoによると、「管理サービス限定(administrative services only、ASO)」契約をBlue KCと締結する、特定の自家保険(self-insured)提供者にも、同社のデジタル・プログラムへのアクセスが提供される。

自家保険とは、主に大企業を中心とした雇用主が、従業員のために提供する健康保険で、保険会社が用意したグループ保険プランを購入するのではなく雇用主自身でプランのデザインを選択できる。雇用主は、従業員に診療給付(medical benefit)を提供するためにBlue KCなどの保険会社とASO契約を結び、事務・運営を委託する。なお、自家保険では財務リスクを負うのは保険会社ではなく、雇用主自身となる。米国では雇用主の4割強が自家保険プランを従業員に提供している。自家保険プランの提供比率は、従業員数が100名未満の中小企業では14%であるが、従業員数が500名以上の大企業では80%と高い。

(出典)U.S. DEPARTMENT OF LABOR
雇用主提供保険における自家保険の割合

デジタルヘルス企業による新規株式公開(IPO)が枯渇状態にある中で、2019年7月にナスダック・グローバル・セレクト・マーケットに上場し、3億5000万ドル以上の大型IPOを成功させたLivongoは、創立以来ビジネスを着々と拡大し、顧客ベースを広げている。同社は4月30日、メディケア・アドバンテージ(MA) プランの認定サービス・プロバイダーとしてメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS) の認定を受けたと発表、高齢者市場にも積極的に進攻している。10月7日には、糖尿病患者向けのデジタル・プログラム提供に向け、連邦機関職員とその家族に健康保険を提供するBlue Cross and Blue Shield Federal Employee Program(以下、FEP)と2年間の契約を締結したことを明らかにしたばかりだ。

合意の下Livongoは、2020年1月からFEPに加入する1型および2型糖尿病患者を対象として、血糖値測定デバイスやスマートフォンアプリを利用したオンライン・コーチングなどで構成される同社のデジタル・プログラムを提供する。

(出典)Livongo
スマホアプリを利用したLivongoの疾病管理プログラム

Livongoは、同社のデジタル・プログラムを利用するメンバーのために、新規サービスの展開に力を入れている。同社は10月15日、糖尿病患者のヘルスケア・アウトカム改善に向けたアウトリーチを目的として、眼科保険会社のVSP Vision Careと提携したことを明らかにした。オーストラリア、カナダ、英国などでも眼科保険を提供するVSP Vision Careは、米国では最大の民間眼科保険会社である。合意の下両社は、「共通顧客」を対象として、両社の統合的サービスを提供する。具体的には、糖尿病を罹患するLivongoのメンバーに対して、VSP Vision Careのネットワーク内医師による網膜検査の受診や、VSPのツールを活用して目のケアを行うよう促すメッセージを、デジタルプログラムを通じて送信する。

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、成人における主要な失明原因となっている。米国の糖尿病性網膜症の患者数は約770万人で、2050年までに1,460万人に増加すると予測されている。また、本合意に基づきLivongoは、VSP Vision Careの従業員やその扶養家族に対して、糖尿病や高血圧症患者向けの同社のデジタル・プログラムを提供する。Livongoは10月28日には、慢性疾患患者に救急ケアとプライマリーケアをバーチャルで提供するため、テレヘルス大手のMDLIVEおよびDoctor On Demandの2社と提携したことを明らかにした。Livongoによると、新規のテレヘルスサービスは2020年1月から、まずは同社のデジタル行動療法プログラムを利用するメンバーを対象に提供が開始され、その後に糖尿病および高血圧症プログラムの利用者に拡大される。

現在、複数の民間保険会社や薬剤給付管理会社(PBM)、また、自家保険を提供する多くの雇用主を含む720以上の組織でLivongoの疾病管理プログラムが導入されている。Livongoによると、自家保険を提供するフォーチュン500企業の20%以上が同社の疾病管理プログラムを導入している。

(了)


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