2019/08/13

米国eHealthジャーナル 第1号

RxRevu、シリーズA投資ラウンドで1,590万ドルを調達

VC投資・M&A・決算, ジャーナル第01号

 
 

処方決定支援プラットフォームの「SwiftRX」

医師向けの処方決定支援プラットフォームを手掛けるコロラド州デンバー拠点のスタートアップ企業RxRevuは6月4日、シリーズA投資ラウンドで1,590万ドルを調達したと発表した。UCHealthが主導した同投資ラウンドには、University of Virginia LVG Venture Fund、Presbyterian Healthcare Services、Inception Health/Froedtert Health、Children’s Hospital Colorado、UnityPoint Health、JAZZ Venture Partnersなども加わった。

RxRevuの処方決定支援プラットフォームである「SwiftRX」は、機械学習を利用して、患者の健康面および財政面の要素を考慮したうえで、最も適切な処方箋医薬品を選択できるよう医師を支援するもの。「SwiftRX」は電子医療記録(EHR)組み込み型のプラットフォームで、診断結果のほか、既往歴や保険プランの情報、患者自己負担金(co-payもしくはco-insuranceと呼ばれる)などの情報がEHRに統合され、それぞれの患者にとって最も安価な医薬品や、事前承認(Prior Authorization)*1 の必要がない医薬品を、処方決定の際にリアルタイムで医師に知らせる。SwiftRXにはまた、最新の治療ガイドラインや標準療法などの情報も盛り込まれている。

医薬品服薬遵守における課題

医師が処方する医薬品を、服薬計画に従って適切に服用するいわゆる服薬遵守は、より良い治療アウトカムと密接に関係している。中でも高血圧症や高脂血症、糖尿病など、長期的な管理が必要な慢性疾患においては、治療アウトカムだけでなく、医療費支出の抑制という点においても服薬遵守は非常に重要である。

しかしこれまでの研究では、医師が発行した処方箋100件のうち、処方箋を薬局に提出して実際に医薬品を受け取る患者の割合は48~66%で、処方された医薬品を正しく服用する患者の割合は25~30%と少ない。また、大手PBMによれば、何らかの理由で処方医薬品の服用を服用開始1年目で中止してしまう患者の割合は50%に上るという。これらのデータは、患者による医薬品の服薬遵守の難しさを表している。服薬遵守ができない理由としては、服用方法に対する誤解、副作用、飲み忘れ、また患者の自己判断による服薬中止などが挙げられるが、主要な理由の1つとして費用の問題がある。


米国では、特にブランド医薬品は他国と比較して、高額だ。そして、保険に加入している場合でも、多くのケースでWACと呼ばれるリストプライスで医薬品を購入することになる。これは、ほとんどの保険プランにおいてディダクタブルと呼ばれる保険免責額が設定されているためで、医療費が免責額を上回るまでの間は、患者は全額自己負担で医療サービスや医薬品を利用することになる。保健福祉省(HHS)によると、米国民の47%は高ディダクタブルの保険プランに加入している。

困難な医薬品の服薬遵守

 

(出典)MSA Partners
 

Federal Reserveが発表する米国人の経済状況に関する年次報告書「Report on the Economic Well-Being of U.S. Households」によると、米国人の40%弱は、400ドルの急な出費の捻出を困難だと回答している *2。そして、WACが400ドル以上のブランド医薬品はいくらでもある。

医薬品のコストと服薬遵守率には高い相関関係が認められることは周知の事実である。
処方箋を持って薬局に行った患者が、自己負担額に驚いて医薬品を買うのを控えるケースが多くあるということだ。薬局での自己負担金は、日本のように一律ではなく、患者が加入する保険プランによって異なるため、それぞれの患者の最終的な支払い金額を、処方医師が把握するのは困難だ。RxRevuの「SwiftRX」は、医薬品価格の「見える化」実現するシステムであり、「価格」を理由とした買い控えを防ぐことに寄与するだろう。

(了)


*1)
事前承認(PA)設定がある医薬品については、医師は処方する前に保険プランに確認して、保険償還の「承認」を得る必要がある

*2)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-05-23/almost-40-of-americans-would-struggle-to-cover-a-400-emergency

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