2022/08/09

米国eHealthジャーナル第70号

SidekickとEli Lillyがデジタルセラピューティクスの開発で提携

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乳癌患者向けの統合ソリューションをドイツで7月に提供

デジタル・セラピューティクス(DTx)開発企業のSidekick Health(以下、Sidekick)は6月17日、乳癌患者を支援するDTx統合ソリューションの開発と配備で米製薬大手のEli Lillyと戦略的提携契約を締結したと発表した。

Sidekickは、ゲームを活用してユーザーの行動変容を促す「ゲーミフィケーション」と行動経済学、人工知能(AI)を用いたDTxの開発に注力している。SidekickのDTxを使用する患者は、エクササイズ、食事、睡眠、ストレス管理、服薬遵守の5要素にフォーカスした個別化デジタル治療計画や関連する教育コンテンツへのアクセスを得る。タスクを完了した患者に報酬を与えることで、患者の行動変容と服薬順守の向上を促す仕組みだ。また、同社のDTxには、臨床ガイドラインを反映した、それぞれの疾病に特化した教育ビデオ、レシピ、ヒントが集められており、人工知能(AI)によってテーラーメイドのアクションプランやメッセージが患者に届くようになっている。服薬リマインダー機能も備え、またコミュニティ・マネジャーによる支援も提供される。この手法は、2型糖尿病から潰瘍性大腸炎(UC)までの様々な慢性疾患に適用可能だという。SidekickのCEO兼共同創設者であるTryggvi Thorgeirsson博士は、「世界のヘルスケアシステムは複数の慢性疾患を抱える患者をどのように支援するかという課題に直面している。Sidekickのアプローチは、複数の慢性疾患に対処可能なDTxプラットフォームを基盤としている」と話す。


出典:Sidekick Health

Eli Lillyとの提携では、まずドイツの乳癌患者とEli Lillyの乳癌治療薬を使用中の患者を対象として、7月からDTxの提供を開始する。両社は、提携対象をほかの地域や他の治療分野にも拡大する可能性がある。

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出典:Sidekick Health

Sidekickは、ドイツの首都ベルリン、アイスランドの首都レイキャビク、スウェーデンの首都ストックホルムと米国のボストンにオフィスを構える。同社は主に欧州市場向けのDTx開発に取り組んでおり、欧州市場を対象として複数の大手製薬企業と提携関係にある。

ドイツの製薬大手Bayerとは2019年12月から末梢動脈疾患(PAD)患者を対象としたDTxの開発で協力しており、スウェーデンを皮切りに欧州のほかの市場への展開を目指している。Pfizerとは2019年にオーストリアでの禁煙DTxの開発で同社オーストリア現地法人と提携したのち、2020年6月には炎症性腸疾患(IBD)の主症状であるクローン病および潰瘍性大腸炎(UC)、そして自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、関節症性乾癬(PsA)を対象とした欧州でのDTxプラットフォームの展開で合意した。

Sidekickは5月23日、Pfizerとの提携から誕生した最初の製品としてアトピー性皮膚炎患者向けDTxの発売を発表した。まず英国で提供を始め、今年中にベルギー、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、フランス、アイルランド、そして日本でも発売する。SidekickとPfizerは、2024年までに世界24市場で同DTxを展開することを目指している。

(了)


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