2022/08/09

米国eHealthジャーナル第70号

Merck、医薬品発見・開発技術の育成に向けたプログラムを創設

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人工知能(AI)と機械学習(ML)アプリケーションの開発企業にフォーカス

米製薬大手のMerckは6月29日、医薬品の発見と開発をけん引する革新的技術を育成するアクセラレータ・プログラム「Merck Digital Sciences Studio(以下MDSS)」の創設を発表した。MDSSは、ニュージャージー工科大学(NJIT)の傘下企業New Jersey Innovation Institute (NJII)とMerckの提携により誕生したアクセラレータで、ニュージャージー州ニューアークとマサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置く。2014年に設立されたNJII は、ヘルスケア、起業、防衛/国土安全保障、専門家・企業教育の4分野で、アイデアをソリューションへと展開させることにフォーカスしている。

MDSSは、革新的技術を開発するデジタルヘルスおよびバイオテクノロジー分野のスタートアップ企業が、速やかに技術を上市するのを支援する。Merckのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)であるMerck Global Health Innovation Fund(GHI)と、米医薬品卸大手McKessonのCVCであるMcKesson Ventures、バイオテク投資に特化する Northpond Venturesが出資し、Microsoftが自社のMicrosoft for Startupプログラムを通じて技術サポートを提供する。GHIは、デジタルヘルス技術への積極的な投資で知られている。

MDSSに選出されたスタートアップ企業には、10カ月に渡ってメンターシップ、コーチング、トレーニング、サポートおよび直接投資といったさまざまな形の支援を受ける。具体的には、転換社債の形で最大15万ドルの資金と、MicrosoftのAzureクラウド・コンピューティング・プラットフォームへのアクセスを可能にする最大15万ドルのクレジット、またMerckの科学者と協力して新規技術を検証する機会が参加企業に提供される。

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出典:Shutterstock

Merckによると、MDSSで最初の支援を受けるスタートアップ企業として12社を募る。選定においては、人工知能(AI)と機械学習(ML)アプリケーションを開発するスタートアップを優先するという。

MerckはAI創薬の分野では今年1月に、複雑なタンパク治療薬の発見を目的にAbsciとの提携を発表している。最大3件の標的を対象する本契約の一時金およびマイルストーン金を含む取引規模は6億1,000万ドル。Absciは、深層学習と合成生物学を基盤とした医薬品および標的の発見に取り組むワシントン州のAI創薬企業で、タンパク治療薬の開発に特化する。Absci独自の技術である「Drug Creation」では、新規薬剤標的の同定と最適な生物製剤候補の発見、またその生物製剤候補を産生する細胞系のデザインを全てインシリコで行う。同技術の利用により、非標準型アミノ酸を含む「Bionig Proteins」などの次世代タンパク治療薬や、他の技術では作製不可能な新規の薬剤デザインが可能になるという。

(了)


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