2022/08/09

米国eHealthジャーナル第70号

デジタルヘルス・ユニコーン企業のRo、大規模人員削減へ

診断・検査・予測, ジャーナル第70号, テレヘルス, Ro

世界の新興テクノロジー企業が試練に直面

一部報道は6月24日、 DTCテレヘルス・プロバイダーのRoman Health Ventures(以下、Ro)が従業員の約18%をレイオフ(一時解雇)すると報じた。Roは、主要なデジタルヘルス・ユニコーン企業として知られる。

同社は、「手ごろでアクセスしやすいヘルスケア提供を支援する技術の構築」をミッションとするデジタルヘルス・スタートアップで、診察、診断、処方をオンラインで行い、メールオーダー(通販)でOTCおよび処方箋医薬品を患者の自宅に届けるサービスを提供している。現在、男性の健康のためのテレヘルス・プラットフォーム「Roman」と、女性の健康のためのテレヘルス・プラットフォーム「Rory」、禁煙セッションを提供する「Zero」などを展開している。また、Ro傘下のメールオーダー薬局であるRo Pharmacyは、500種類以上のジェネリック薬を1カ月分約5ドルで提供している。

Roはこれまで、テレヘルス診療科目の拡大と事業の多角化に努めてきた。2020年12月にはWorkpathを買収し、在宅医療サービス市場への参入を果たしている。2015年設立のWorkpathは、シンプルなアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)システムにより、ヘルスケア企業が患者に在宅ケアサービスや在宅診断サービスをオンデマンドで提供することを可能するソフトウェア・プラットフォームを擁している。患者がクリニックを訪問するのではなく、瀉血専門家やその他のケアプロバイダーを患者自宅に送ることで、採血からワクチン接種までのサービスを患者の自宅で実施する。Roのプラットフォーム上で提供するバーチャルケアと、専門家が実施する診断テストなどの対面ケアをシームレスに統合するものであり、Roが提供できるサービスのラインはWorkpathの買収により大きく拡大された。

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出典:Workpath

その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行を背景としてバーチャルで提供されるメンタルヘルスケアの需要が拡大する中で精神科テレヘルスの領域に参入し、2021年7月に精神科テレヘルスの「Ro Mind」を開設。また、2022年2月にはデジタル・スキンケアクリニックの「Ro Derm」を立ち上げたことを明らかにしている。

Roは、2021年3月に完了したシリーズD投資ラウンドで5億ドルを調達し、同年5月には女性の生殖機能診断のためのホームキットを提供するModern Fertilityを買収して、サービスラインナップをさらに拡大していた。また今年2月には、ShawSpring Partnersが主導した資金調達ラウンドで1億5,000万ドルを調達し、それによって同社の評価額は70億ドルに達していた。


出典:Modern Fertility

RoのCEOであるZachariah Reitano氏は、同社従業員に宛てたEメールにおいて「過去6カ月にわたり、起こり得る減速に備えて、追加の資金調達やフォーカスする事業の絞り込みなどに努めてきたが、残念ながら、より大規模な改革が必要であるとの結論に至った」と説明している。

Roに限らず、世界の新興テクノロジー企業は現在、試練に直面している。公表情報を基に新興テクノロジー企業の人員削減を集計しているLayoffs.fyiによると、4月以降の米国を中心とする世界のレイオフは2万人を超え、四半期のデータとして過去2年間で最多となった。ハイテク株安と新規株式公開(IPO)の低迷によって資金調達のハードルが上がっており、スタートアップ企業が生き残るためには、レイオフに踏み切らざるを得ない状況にある。

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出典:Shutterstock

(了)


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