2022/08/23
米国eHealthジャーナル第71号
インド企業のWysa、シリーズB投資ラウンドで2,000万ドルを調達
医療コミュニケーション支援, インド, 精神疾患, Wysa, VC投資･M&A･決算, ジャーナル第71号, デジタルセラピューティクス
AI基盤チャットボット・アプリでメンタルヘルスケアを提供
メンタルヘルスケアのための人工知能（AI）基盤チャットボット・アプリを開発するデジタルヘルス・スタートアップ企業のWysaは7月14日、シリーズB投資ラウンドで2,000万ドルを調達した。インドでのデジタルヘルス投資に特化するベンチャー・キャピタル（VC）ファンドのHealthQuadが主導した今回のシリーズB投資ラウンドには、 British International Investment（BII）のほか、Wysa の既存投資家であるW Health Ventures、Kae Capital、Google Assistant Investments、pi Venturesが参加した。 Wysaは2021年5月に完了したシリーズA投資ラウンドで550万ドルを調達している。一部報道によると、シリーズB投資ラウンド以前のWysaの総調達額は940万ドルで、同社の投資家の顔ぶれにはGoogle（digital assistant funds）とAmazonが含まれている。Wysaの評価額は非公表となっている。
2015年にインドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロールで創業されたWysaは、65カ国に450万名のユーザー基盤を擁する人気のメンタルヘルスアプリを持つ。メンタルヘルスケアは診断に基づいて提供されるサービスであり、治療費は高額であるため、症状が重篤なケースでなければ、問題を抱えていたとしても人々が専門家の治療を受けることは稀である、とWysaは説明する。しかし、深刻ではないが個人のメンタルヘルスについて匿名で相談したいというニーズは大きい。Wysaのスマートフォン・アプリは、そういったニーズを満たすものであり、AIチャットボットが認知行動療法（CBT）や瞑想、呼吸法をはじめとする様々な方法・技術により、メンタルヘルスに関する問題への早期介入を実現する。
Wysaによると、同社のスマートフォン・アプリのユーザーの80％は、雇用主を対象とした「B to B」からもたらされている。顧客の顔ぶれには、コンサルティング企業のAccentureや歯磨き粉で知られる日常生活用品メーカーのColgate-Palmolive、民間保険会社のAetna Internationalなどが含まれ、こういった多国籍大企業が、従業員向け保険ベネフィットの一環としてWysaのアプリを提供している。アプリは、トリアージの機能も果たしており、ユーザーの症状の重篤度に応じて、人によるコーチングや専門家によるケア、そして自殺・自傷行為を防止するクライシス・サポートラインにつなげる役割を果たす。
出典：Wysa
Wysaは今回のシリーズBで調達した資金を、特に米国、英国およびインド市場を中心としたグローバル規模での更なるビジネス拡大のために利用する。また、英語以外の言語のサポートや、メッセージング・アプリ「WhatsApp」を介したサービスへのアクセスの実現に向けても資金を利用するという。
Wysaは2022年5月には、慢性の筋骨格（MSK）系疼痛とそれらに関連した不安症およびうつ症状を抱える成人患者を対象としたAIチャットボット・アプリの利用について、FDAから画期的医療機器指定を獲得している。画期的医療機器指定とは、「生命の危険がある、または患者を不可逆的に衰弱させる疾患や症状」を治療または診断する新規医療機器の迅速な上市を支援するプログラムで、指定を受けた医療機器は他の審査待ち医療機器よりも優先的にFDAの審査を受けることができる。
Wysaと同様のAIチャットボット基盤のメンタルヘルスサービスを提供している企業としては、Woebot Healthがある。Woebot Healthは2017年に設立されたカリフォルニア州サンフランシスコ拠点のスタートアップ企業で、チャットボット基盤のデジタル・セラピューティクス（DTx）を開発している。AIと自然言語処理（NLP）技術に基づくチャットボットの「Woebot」は、年間で何百万件にも及ぶユーザーとの「対話」から学び、個々のユーザーの健康や精神状態を把握して、ユーザーのニーズに合致するデジタル・レッスンを提供する。デジタル・レッスンはCBTや、マインドフルネス、弁証法的行動療法（DBT）といったエビデンス基盤のアプローチに基づくもので、ストレスを緩和させて、より幸福な人生を送るスキルを体得するのを支援する。Woebot Healthは、産後うつを適応症とする「WB001」について2021年5月にFDAから画期的医療機器指定を獲得している。
（了）
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