2022/09/13

米国eHealthジャーナル第72号

Ginkgo BioworksがZymergenを買収

Ginkgo, AI技術, ジャーナル第72号, 創薬

合成生物学プラットフォームを強化

合成生物学基盤の技術を用いて、農業や廃棄物処理、食品、ヘルスケアまでの幅広い業界を対象として、産業アプリケーションとしての微生物設計に特化するマサチューセッツ州ボストン拠点のGinkgo Bioworks(以下、Ginkgo)は7月25日、独自の合成生物学プラットフォームを持つカリフォルニア州エメリーヴィル拠点のZymergenを買収することで両社が合意に至ったと発表した。買収取引は株式交換によって行われ、Zymergenの株主は同社株1株あたりGinkgo株0.9179株を受け取る。買収額は総額約3億ドル。

ZymergenはGinkgoと同様に、産業アプリケーションとしての微生物設計に取り組んでいる。創薬の取り組みにおいては、メタゲノム解析、機械学習(ML)技術、そして合成生物学における独自の専門性を利用して、さまざまな種類の複雑な化合物作製を目指している。具体的には、メタゲノム解析によって化学の未開拓分野にアクセスし、MLツールによって有望な医薬品候補を数週間以内にイン・シリコで特定し、さらに同社独自の合成生物学プラットフォームを利用して、組み換え微生物に由来する化合物を作製する。

Zymergenは、合成生物学プラットフォームのほかにも、ソフトウェア、ハードウェア、アプリケーション開発能力などを備えた包括的なラボラトリー・オートメーション・ソリューションを擁している。

Ginkgoは、微生物組み換え能力を強化するZymergenのラボオートメーションおよびソフトウェア技術を自社のプラットフォーム技術である「Foundry」に組み込むことにより、有機体の組み換えプロセスの自動化と規模拡大を加速できると期待する。



出典:Ginkgo

2013年に設立されたZymergenは、2021年4月に5億7,500万ドル規模の新規株式公開(IPO)を実施し、Nasdaq株式市場への上場を果たした。IPO当時の時価総額は約30億ドルだったが、その後2021年8月、同社製品の技術面での問題を理由として2021年は製品売上がゼロとなる予測を明らかにし、株価は大幅に下落していた。Ginkgoによる買収額の約3億ドルは、Zymergenの現在の時価総額に相当する。

一方のGinkgoは、2021年5月に特別買収目的会社(SPAC)のSoaring Eagle Acquisitionと合併することを明らかにし、同年9月に合併取引を完了。ニューヨーク証券取引所(NYSE)上場企業となった。Ginkgoは製薬企業との提携にも積極的で、2021年5月には、遺伝子治療用の組み換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの製造を強化を目的として米バイオテク大手のBiogenと提携している。AAVベクターの製造には時間や費用がかかることから、大規模な患者人口を対象とした高用量の遺伝子治療薬の開発が困難という問題がある。Ginkgoは、これらの製造面の課題を解決するために独自の哺乳類細胞プログラミング・プラットフォームを利用し、AAVベクターの作製に必要なプラスミドベクターと、細胞系の開発の効率性向上を図る。

出典:Ginkgo

(了)


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