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ゲノミクス実践ネットワークの第2フェーズが開始
国立衛生研究所(NIH)は6月5日、高血圧症やうつ症状、慢性疼痛などの管理の改善を目的としたゲノム医療基盤の介入について、その有用性と妥当性を評価する2件の臨床試験に合計4,200万ドルを投じる計画を発表した。臨床試験は2020年に開始される。
これらの資金は、NIH傘下の「National Human Genome Research Institute」が、ゲノミクスの応用を目的として2013年に開始した取り組みである「Implementing Genomics in Practice(IGNITE)」の第2フェーズのために使われる。IGNITEの第1フェーズでは、ゲノム情報を電子医療記録(EHR)に統合する際の課題とソリューションの特定に重点が置かれていた。
1件目の試験は、患者のゲノムデータへの早期アクセスが、高血圧症や慢性腎疾患の治療改善につながるかどうかを検証するもの。高血圧症や末期腎不全は、ヨーロッパ系やアジア系よりもアフリカ系の祖先を持つ人口でより一般的であることが知られる。そして、末期腎不全は高血圧により悪化することが分かっている。特定のアフリカ系人口では、APOL1遺伝子に2つの変異があり、そのために重篤な腎疾患に対する感受性が10倍高い。
研究では、被験者登録の直後にAPOL1変異テストを受けた群と、3ヶ月後に同テストを受けた群で、医療介入とその後のベネフィットに差が出るかどうかを検証する。遺伝子テストを受けることでアフリカ系人口の高血圧症状の管理のあり方が改善され、高血圧起因性の腎疾患予防につながる可能性がある。
2件目の試験は、疼痛とうつ症状に焦点を当てたもの。これらの症状は医薬品による安全で有効な治療が難しく、その一因として、臨床的に有用な治療効果の予測方法がほとんど存在しないことがある。試験では、術後急性疼痛、慢性疼痛、うつ病の患者を対象に、オピオイド製剤や抗うつ剤の使用に関する薬理ゲノム学的な指針が、患者アウトカムの改善に貢献するかどうかを検証する。薬理ゲノム学では、患者の遺伝子構成から医薬品に対する反応を予測する。
これらの臨床試験は、University of Florida、University of Indiana、Duke University、Vanderbilt University、Icahn School of Medicine at Mount Sinaiで実施される。
(了)
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