2022/11/08

米国eHealthジャーナル第76号

Genfitが、Versantisを買収

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ポイントオブケア診断機器候補を獲得

Genfitは9月19日、Versantisを買収することで両社が合意に至ったと発表した。Genfitは重篤な慢性肝疾患の治療法開発に注力するフランス拠点のバイオ製薬企業で、NASDAQに上場している。Versantisはスイスを拠点に肝疾患治療薬を開発する株式非公開のバイオテク企業。

Versantisの買収によりGenfitは、医薬品候補2つとポイントオブケア診断用機器候補1つを獲得する。そのうち開発が最も進んだVS-01は、医薬品クラス初の新規リポソーム基盤の治療薬候補で、穿刺術後に有毒代謝物を血液から腹腔に排出することにより、体から有毒代謝物を除去する働きを持つ。有毒代謝物は、腹腔内で独自の「スカベンジング・リポソーム」によって捕捉され、体外へ排出される。VS-01は現在、慢性肝不全の急性増悪(Acute-On-Chronic Liver Failure、ACLF)および尿素サイクル異常症(UCD)を適応症に、それぞれフェーズII試験と前臨床段階で開発中だ。もう1つの薬剤候補、VS-02は肝性昏睡(HE)の継続的な管理を適応に前臨床段階にある経口の低分子医薬品候補で、脳内のグルタミンレベルを低下させながらアンモニアの全身吸収を最小限に抑え、アンモニアが主に生成される結腸で作用するよう設計されている。HEは進行した慢性肝疾患によって引き起こされる神経系障害であり、世界で風土病と認識されている。

出典:Shutterstock

診断用機器候補のポイントオブケア診断装置であるTS-01は、血中アンモニア量を在宅で測定するためのもの。血中アンモニア量の増加はHEを引き起こす主要因である。TS-01は、HE患者の血中アンモニア濃度のより厳密な管理と、患者の症状に対する医薬品のより適切な管理を行う手段として期待されている。Versantisは現在、TS-01のプロトタイプを開発中だ。

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合意の下、Genfitは取引完了時に4,000万スイスフラン(約4,070万ドル)をVersantisに支払うほか、VS-01とVS-02のフェーズII試験の結果が良好で、VS-01が規制当局から承認された場合には、最大6,500万スイスフラン(約6,620万ドル)を支払う。さらにVersantisは、VS-01が小児科疾患治療薬として承認され、希少小児疾患治療薬のための優先審査バウチャー(PRV)をGenfitが獲得した後に第三者にこれを売却した場合、売却益の3分の1を、またGenfitがバウチャーを自社プログラムの1つに利用することを選択した場合には、このバウチャーの公正市場価格の3分の1を受領する権利がある。PRVプログラムは、市場規模が小さいことを理由に製薬企業の関心が低い分野の新薬開発を促進するためのインセンティブ付与を目的とするもので、希少疾患治療薬の承認取得に伴いPRVを獲得した企業は、自ら選択した医薬品候補にPRVを使用することで、当該医薬品候補の優先審査指定を確保することができる。PRVは第三者への売却も可能である。

Genfitは本買収取引の完了を2022年第4四半期に見込んでいる。

(了)


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