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死戦期呼吸を検出する機械学習モデル
スマートデバイスを利用した心停止の非接触性検出に関する研究「Contactless cardiac arrest detection using smart devices」が、6月19日付でNPJ Digital Medicineに掲載された。University of Washingtonの研究班は、心停止に伴う「死戦期呼吸」と呼ばれる喘ぐような呼吸が、心停止の診断を行うための「音声バイオマーカ」として活用できる可能性に注目。スマートフォンやスマートスピーカーを利用して、死戦期呼吸を検出するため、「Support Vector Machine(SVM)」と呼ばれるパターン認識アルゴリズムを用いた予測モデルを作成し、概念実証研究を実施した。「Sapport Vector」とは、「予測のために本当に必要となる一部のデータ」を意味し、Sapport Vectorを用いた機械学習法がSVMである。
心停止には、迅速な診断と心肺蘇生法(CPR)の実施が不可欠である。CPRを行うのが1分遅れるごとに、患者の生き延びる確率が10%低くなってしまう。心停止が起きた場合、患者はやがて完全に意識を失って自分で体を動かすことができなくなるため、周りに誰もいない環境での心停止は主要な死亡原因の1つとなっている。
研究班は、心停止患者による911通報(緊急通報用番号)の音声データを利用して、様々な音の中から死戦期呼吸を正確に検出できるようモデルを訓練した。結果、機械学習モデルの感度(sensitivity)と特異度(specificity)はそれぞれ97.24%と 99.51%で、一般的なスマートデバイスを利用した在宅ベースの非接触性心停止検出システムの有用性が示唆された。
研究班によると、スマートデバイスを利用したこの検出システムは、ユーザに何らかのデバイス装着を要求するものではなく、また、すでに自宅にあるスピーカーや所有するスマートフォンを利用するものであり、配備のハードルが低いという利点がある。しかしながら、死戦期呼吸を伴う心停止患者は全体の50%未満であり、研究班は同検出システムの欠点として、死戦期呼吸を伴わない心停止患者については、その検出を行うことが出来ない点を挙げている。
(了)
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