2022/12/27
米国eHealthジャーナル第79号
Sanofi、Insilico Medicineと戦略的研究で提携
Insilico Medicine, AI技術, 創薬, ジャーナル第79号, 提携
「PHARMA.AI」のライセンス供与で最大規模の契約
香港およびニューヨークを拠点とする人工知能(AI)創薬スタートアップのInsilico Medicine(以下、Insilico)は11月8日 、複数年にわたる戦略的研究提携契約をフランスの製薬大手Sanofiと締結したと発表した。両社はInsilicoが「PHARMA.AI」と呼ぶAI創薬プラットフォームを利用し、最大6つの新しい標的に対する医薬品候補の開発を進める。
合意の下、SanofiはInsilicoに契約一時金と標的選択に関する費用として合計で最大2,150万ドルを支払い、Insilicoの医薬品発見チームと「PHARMA.AI」にアクセスする権利を取得する。Sanofiは開発を進める医薬品候補の特定と合成を行い、化合物を開発段階まで進める。Insilico は、研究開発の進捗および売上に応じたマイルストーン金として最大12億ドルと、提携から誕生した医薬品候補が承認された場合は売上に応じたロイヤルティをSanofiから受領する。
「PHARMA.AI」は、疾患の標的特定、臨床試験の結果予測、新規分子データの生成の各領域で開発迅速化に貢献する3つの技術で構成されている。その1つである「PandaOmics」は、マルチオミクス解析を基盤とした新規標的の探索エンジンで、Insilicoによると、バイオインフォマティクスの知識がなくてもPandaOmicsを利用することでオミクスデータの分析を実行できる。「InClinico」は、疾病や標的、臨床試験に関するビッグデータに基づき、試験デザインの弱点を把握してその成功率を予測するプラットフォームだ。試験デザインの欠点を特定しながら最良の方法の採用を支援する。「Chemistry42」は、新規低分子の迅速なデザインを可能にする機械学習(ML)基盤の化合物生成プラットフォームで、Insilicoによると、Chemistry42を活用すれば、ほんの数日で新規の化合物の構造および設計を得ることができる。
出典:Insilico
出典:Insilico
Insilicoは、AI創薬プラットフォーム関連サービス事業のほかに自社内創薬事業も展開しており、創薬事業では独自のパイプラインを構築し、複数の前臨床プログラムの開発を手掛けている。Insilicoは、2019年9月のシリーズB投資ラウンド以降にAI創薬プラットフォームを製薬企業にライセンス導出する事業を強化しており、現在では世界の製薬企業トップ20社のうち約半数で、InsilicoのAI創薬プラットフォームが活用されているという。提携先の顔ぶれには、米製薬大手のPfizerやGSK、Janssen Pharmaceutical、ドイツの製薬大手Boehringer Ingelheimが含まれるが、今回のSanofiとの提携が、Insilicoにとって最大規模の提携となる。
Insilicoは2022年6月のシリーズD投資ラウンドで6,000万ドルを調達したことを明らかにした。同ラウンドには、Insilicoの既存投資家であるWarburg PincusやB Capital Group、Qiming Venture Partners、BOLD Capital Partners、Pavilion Capitalのほか、新規の投資家としてBHR Partnersと、米国西海岸を拠点とする社名非公開のアセットマネジメント企業が加わった。また、Insilicoの創設者兼CEOであるAlex Zhavoronkov博士も同ラウンドに参画した。
(了)
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