2022/12/27

米国eHealthジャーナル第79号

イスラエルEpitomee社、肥満治療の経口カプセルを開発

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満腹感を持続させ、減量へ

新型コロナウイルス感染症患者が初めて確認された2019年12月から、早3年が経とうとしている。国内外での行動制限は緩和されたものの、社会的距離を強いられる社会環境でメンタルヘルスに問題を来すケースが大幅に増えた。また必要な量の食事を食べられない拒食症や、自分ではコントロール出来ずに食べ過ぎてしまう過食症など、摂食障害に悩む患者が増えたことも各所で報告されている。

本稿では、過体重や肥満症を適応とした治療用カプセル医療機器を開発する、イスラエルの Epitomee社 (Epitomee Medical Ltd.)  を紹介する。

(出典) Shutterstock

このカプセル医療機器は、肥満症患者が自己管理できる減量治療用の医療機器として開発された。
食前に経口摂取したカプセルが胃に到達して溶解すると、膨潤性バイオポリマーから成る内側のフィルムが、胃液のpHレベルで半硬質の三角形に拡張・形状変化する。これが胃壁に直接刺激を与えながら胃内に滞留することで、固形食品を摂取した時と同様の満腹感をもたらし、さらに胃内容物の排出を長引かせる。その結果、日々のカロリー摂取量が減少し、体重減少へ導く。
カプセルは全て生分解性物質で組成されており、飲み込んでから数時間以内に完全に溶解し、食物と同様に通常の排便を通じて排泄されるため、忍容性も高い。
→ https://epitomeemedical.com/weight-management/

11月初旬に米サンディエゴで開催された The Obesity Society (肥満学会) 主催の ObesityWeek では、同カプセルを1日2回、12週間使用した患者が、2週間毎の体重計測の全ての時点で有意な体重減少が認められたことが報告された。
その他の臨床研究においても、前糖尿病や2型糖尿病患者の血糖値コントロールやQOLが改善され、高血圧患者の血圧レベル改善も報告されている。

同カプセルは、2020年9月に欧州CEマークを取得。現在、米国での製造販売承認申請に向けた治験(NCT04222322)を実施しており、2023年秋季以降に結果が発表される見通しである。
Epitomee社は2020年8月、スイスの Nestlé Health Science社  と戦略的提携を締結し、Nestléの栄養健康ソリューション開発力を背に、カプセルの開発と商業化を共同で目指すこととなった。

  
(出典) Epitomee

さらに、Epitomee社は現在、減量用カプセルに加えて、生物製剤などを腸壁に直接送達できるカプセルの開発にも取り組んでいる。経口摂取したカプセルが小腸に届くと、腸内pHレベルに反応して半硬質の六角形チューブに拡張・変形して粘膜接着層を形成することで腸壁と直接接触し、組み込んだ成分が所定の時間、制御されながら放出されるという仕組みである。
標的指向化された薬物送達システムとしても、医療分野で大きな注目を集めていくことが期待されている。
→ https://epitomeemedical.com/biologics-delivery/

肥満症の治療の基本には、食習慣や運動習慣など、生活習慣の改善があり、摂取カロリーを制限する食事療法は欠かせない。治験を通して「Epitomeeカプセル」の有効性が確かなものとなれば、自宅・職場・外出先など、持ち運びが容易で手軽に使用できるカプセルの可能性は大きく広がるものとなる。摂食障害においても、行動変容に向けた認知行動療法アプリなど新しい治療法が次々と登場する現在、「Epitomeeカプセル」が増え続ける肥満症患者の新しい選択肢足り得るか、更なるエビデンスの積み上げに注目が集まる。

(了)


本記事は以下の公式発表を翻訳要約し、適宜解説を加えたものである。


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