2023/02/14

米国eHealthジャーナル第82号

Boehringer Ingelheim、Click Therapeuticsとの既存提携を拡大

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統合失調症を適応症とする2つ目のDTx開発で

ドイツの製薬大手Boehringer Ingelheim(以下Boehringer)は12月19日、デジタルセラピューティクス(DTx)の開発に特化するClick Therapeutics(以下Click)との既存提携を拡大したと発表した。両社は2020年9月に、統合失調症を適応症とした処方箋DTxの開発と商業化で提携している。今回の提携拡大では同じく統合失調症を適応症に、2件目となる処方箋DTxの開発を目指す。統合失調症患者の約半数は精神面と行動面での障害を併発し、治療ガイドラインでは患者ごとに個別化された心理社会的介入療法が推奨されているものの、こうした介入療法へのアクセスは十分でない。

両社はこれまで、心理社会的介入療法へのアクセス不足という、統合失調症患者の未充足ニーズに着目し、治療のためのより良いツールとリソースの提供で協力してきた。具体的には、Click独自のエンゲージメント・プラットフォームを活用し、統合失調症患者の認知障害と社会機能障害の改善を目的として、処方箋DTx候補の「CT-155」を開発している。現在フェーズII臨床試験段階下にあるCT-155は、臨床的に実証された複数の治療的介入を組み合わせたもので、統合失調症患者が良好な臨床アウトカムを達成できるよう、アプリ単独または他の薬物療法との組み合わせで患者の行動を修正する。

Clickのパイプライン

出典:Click Therapeutics

両社は今回の提携拡大においても、臨床的エビデンスを有する複数の治療介入を組み合わせ、単独または薬物療法との併用により、統合失調症患者が良好な治療アウトカムを達成できるように支援する処方箋DTxを共同で開発し、その商業化を目指す。

ニューヨーク州ニューヨーク市に本社を置くClickは、禁煙、大うつ病、統合失調症、不眠症、急性冠症候群、片頭痛、過活動膀胱、慢性腰痛、肥満などを含む、さまざまな適応症のための新規DTxを開発し商業化している。同社は2016年4月に禁煙アプリの「Clickotine(開発番号CT-101)」をリリース。Clickotineの利用に処方箋は必要なく、誰でも無料でダウンロードすることが可能だ。Clickotineは、有料のオプションを追加することによりアプリの機能を拡大できる。Clickotineは一部の民間および公的保険でカバーされており、保険が適用される場合、ユーザーの費用負担はない。


出典:Click Therapeutics

処方箋DTxとしては、大うつ病性障害(MDD)を適応症とする「CT-152」が現在、フェーズIII試験開発段階にある。Clickは2019年1月、大塚製薬の米国子会社とCT-152の開発で合意している。CT-152は、独自のトレーニング法を使った認知療法アプリで、ワーキングメモリ(短期記憶)を強化してうつ病に対する改善効果を示すと考えられている。このトレーニングを6週間実施したパイロット試験では、うつ病の回復を評価する指標であるHAM-Dスコアが、統計的有意に改善されたことが示された。

Clickは2022年12月19日には、18歳以上の反復性片頭痛患者における片頭痛予防を適応に補助療法として開発中のCT-132について、FDAから画期的医療機器指定を受けたと発表している。片頭痛は米国で約4,700 万人が罹患していると推定されている疾患で、発作が数時間から数日間継続する。雇用、学歴、人間関係など、生活の様々な側面に悪影響を及ぼし、依然として満たされない医療ニーズが存在する。ClickはCT-132の画期的医療機器指定について、デジタル技術で神経活性化と調節を行う独自のDiNaMo(digital neuroactivation and modulation)技術と神経行動学的メカニズムを基盤とするCNI(Click Neurobehavioral Intervention)技術を組み合わせた同社のユニークなアプローチが有効であることを実証するものだと述べた。CT-132は現在フェーズII臨床試験段階にあるが、Clickによると、同社はCT-132のFDA承認申請に向けた3件の試験をすでに実施中、もしくは完了している。

(了)


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