2023/02/14

米国eHealthジャーナル第82号

複合現実で献血体験をグレードアップするMS「HoloLens 2」

XR (VR/AR/MR)技術, 医療コミュニケーション支援, Abbott, ジャーナル第82号, Microsoft, CES, 提携

Abbott社が米国最大の血液供給者BCAと提携

新型コロナ禍により甚大な影響を受けた臨床現場。献血ルームも例外ではない。感染を恐れる献血者の多くが対面接触となる献血を忌避したこと、そして過去十年間で最低の献血量を記録したという調査結果が、海外では報じられている。
禍に端を発した一時的なものならば、物理的な制限が緩和され、心理的な抵抗が和らぐにしたがって好転の兆しも見えてこよう。ただ、ビフォーコロナ10年間の傾向として、次世代の献血の担い手である30歳未満の献血者の最大30パーセントが失われてきた。血液供給の持続可能性に危機が生じた、正に献血離れともいうべき状況だ。
そこで、次世代の献血者である、若年層(ミレニアル世代、Z世代)へ献血を普及する方策が、各方面で模索されてきた。

米国最大の血液供給ネットワークである Blood Centers of America (以下、BCA社) は1月6日、
Abbott Laboratories (以下、Abbott社) と提携し、Microsoft社「HoloLens 2」を通じたデジタル体験を献血ルームに提供する計画を発表した。

自然環境が最も献血に適した環境であるという研究結果に基づき本システムは設計されており、軽量のヘッドセットを装着した献血者は仮想空間である庭園を訪問し、音楽を聴きながら、色とりどりの木々や草花に成長する種子を植える仮想体験が提供される。
新たなシステムというと操作に慣れが必要と身構えてしまいそうだが、視線に追従するアイトラッキング技術が導入された HoloLens 2 はハンズフリーで操作が可能で、意識せぬ間にコンテンツへの没入感を深め、献血していることすら忘れてしまいそうである。


出典:Abbott

また、献血の健康被害として散見される血管迷走神経反応、いわゆる気分不良にも対応が考慮されている。献血者の表情は常に監視と評価が可能な状態にあり、献血ルーム側にとっても、これまでと変わりなく、安全な実施が可能だ。

本システムは、最先端の技術や電子機器、関連サービスを展示するテクノロジー見本市「CES 2023」(1月5日(木)~8日(日)、於・米国ネバダ州ラスベガス)でデモ展示された。現在、全米BCAの一部で試験運用を予定しており、Abbott社が運営するサイト「BE THE ONE」から申し込みを受け付けている。

(了)


本記事は以下の公式発表を翻訳要約し、適宜解説を加えたものである。


本記事掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2023 株式会社シーエムプラス LSMIP編集部

連載記事

執筆者について

関連記事