2019/06/25
米国eHealthジャーナル試読版
統合的モバイルヘルスの実現へ
複数の州をまたいだテレヘルスを可能にする州間協定
米国では、医師、弁護士、会計士などの「免許」は州政府の管轄とされている。
薬剤師や看護婦、医療アシスタントなどの資格も州政府によって定められており、それぞれの権限(薬剤師によるジェネリック薬への強制代替など)も州ごとによって異なる。米国特有のこういった状況は、州をまたいだ統合的ヘルスケアサービスのデリバリーを阻害している。
American Telemedicine Associationが2017年2月に発表した報告書によると、隣接州で取得した医師免許での開業を認めているのは、ニューヨーク州、メリーランド州、バージニア州、ワシントンDCのみで、そのほかフロリダ州、メイン州、ニューメキシコ州の3州が、州内開業の資格を満たす州外医師のレジストリーを構築している。州外免許を持つ医師に条件付きでの開業、もしくはテレメディシンの提供のみを許可する州としては、ルイジアナ州、ミネソタ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、オハイオ州、オレゴン州、テネシー州、テキサス州がある。
なお、医師免許については、免許の交付を受けた州以外でサービスを提供したい医師のニーズに応える枠組みとして、2017年にInterstate Medical Licensure Compact(IMLC)が締結された。
現在、29州とグアム、ワシントンDCがIMLCに加わっており、協定締結州における迅速な免許交付が可能となっている*1。IMLCによって医師は、他州に居住する患者にバーチャル診療を提供することが可能となり、テレヘルス拡大の追い風となっている。
また、理学療法士についても、IMLC に類似する取り組みとして2018年7月にPhysical Therapy Compact(PT Compact)が締結された。現在13州でPT Compactが実効化されているが、他の13州では協定を結んだものの実効化が遅れている。同様に、看護師資格の州間協定で現在は33州が加わるNurse Licensure Compact (NLC)*2 は2018年に、また心理カウンセラーについての州間協定で7州が加わるPsychology Interjurisdictional Compact(PSYPACT)は2015年に締結された。
救急医療サービス(EMS)プロバイダーが、複数の州をまたいでテレヘルスを提供するのを可能にする州間協定のRecognition of EMS Personnel Licensure Interstate CompAct (REPLICA)には2019年4月1日現在、ニューハンプシャー州、デラウェア州、バージニア州、テネシー州、サウスカロライナ州、ジョージア州、アラバマ州、ミシシッピー州、テキサス州、ミズーリ州、カンザス州、コロラド州、ユタ州、ワイオミング州、アイダホ州が加わり、その他9州が協定締結を審議中だ。
同協定は、最小締結州数が10州に到達した2017年5月に有効となったものの、同協定の実効化に必要となる規則や方針の制定は進んでいない。REPLICAは、統合的モバイルヘルスを実現するものとして期待されており、REPLICAの運営機関であるInterstate Commission for EMS Personnel Practice Membersは現在、2020年1月1日を期日として規則および方針の最終化に取り組んでいる。
(了)
*1) Interstate Medical Licensure Compact:https://imlcc.org/ 一部のメンバー州では導入が遅れている
*2) https://www.ncsbn.org/nlcmemberstates519.pdf
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