2019/09/10

米国eHealthジャーナル 第3号

Purdue University、オピオイド問題に対処するウェアラブルを開発?

ジャーナル第03号, 行政・規制ニュース, ウェアラブル, 物質使用障害

 
 

緊急時にnaloxoneを自動投与

Purdue Universityは7月24日、オピオイド過剰摂取患者の救急用治療薬naloxoneを緊急時に自動的に投与するウェアラブルデバイスを開発し中であると発表した。内蔵センサーが患者の心拍数の低下を察知すると、皮下に埋め込まれたチューブからnaloxoneカプセルが押し出され、体内に自動的に投与されるデザインとなっている。


 

(出典)Purdue University


Naloxoneはオピオイド過剰摂取に対する拮抗剤としてその有効性が実証されているが、過剰摂取時において患者は1人でいることが多く、また体も自由に動かせない。

Purdue Universityの研究者らは、オピオイドを利用する患者の外来診療時に、皮下にnaloxoneカプセル内包チューブを埋め込む方法を採用することで、こういった問題に対処しようとしている。カプセルは高用量を体内に送達することが可能で、これによって救急隊到着までの時間を稼ぐことが可能となる。

オピオイドと比較してnaloxoneは半減期が短く、作用持続時間が約30分であるため、通常は症状の再燃にあわせてnaloxoneを30~60分毎に複数回投与する必要がある。

米国ではオピオイド問題が深刻化しており、公衆衛生の向上を掲げる連邦機関であるCDC(Centers for Disease Control and Prevention)によると、2017年だけでも7万237名がオピオイド過剰摂取で死亡している。官民での取り組みが行われているものの、オピオイド危機は以前として収束していない。
 


 

FDAは2019年1月、naloxoneのOTC薬化を進めるための方策を発表した。naloxoneは現在、処方箋医薬品としてのみ利用が可能だ。

Alphabet傘下のライフサイエンス企業Verily Life Sciencesは2019年2月、米国のオピオイド危機に対処するため、2つの地域ヘルスシステムと協力し、オハイオ州デイトンに非営利エコシステム「OneFifteen」を創設すると発表した。

国立衛生研究所(NIH)は2019年4月、疼痛およびオピオイド中毒問題に対処するため2018年4月に開始したHEAL(Helping to End Addiction Long-term)イニシアチブの一環として「コミュニティ研究」を実施すると発表し、オピオイド問題に直面する4州の研究機関を選出した。

Yale UniversityとMayo Clinicは7月30日に、オピオイド利用についての研究プロジェクトに対し、FDAから2年間530万ドルのグラントを受領したと発表したばかりだ。Hugoと呼ばれるヘルスデータ共有プラットフォームを利用する同研究では、オピオイド処方を受けた患者1,200名を180日間追跡し、疼痛管理やオピオイド利用に関するデータを収集。FDAは同データを通じ、オピオイド利用者の特性を理解し、適切な処方ガイドラインの策定につなげたい考えだ。

 

(了)


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