2022/04/05

デジタルテクノロジーによって進化する歯科治療(第2回)

【前編】デジタルは手仕事を助けられるか ―歯科用3Dプリンターが変える近未来

医療コミュニケーション支援, 臨床医, 日本, 歯科・口腔外科

歯科用3Dプリンターが匠の仕事・義歯製作をアシストする時代が来る

 

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(出所:Shutterstock)

入れ歯は不思議なものだと思いませんか?指で口から取り出せば硬い人工物に過ぎないものが、やわらかい口の中で失われた歯や歯ぐきとしての役割を果たします。良い義歯はなぜ、食べ物を咀嚼したり、話をしたり、といった複雑な動きをしても外れず、口の中を傷付けずに働くのでしょうか?

口の中には粘膜の下に顎の骨や筋肉があります。義歯は口を開けたり閉めたりするときに動く筋肉や、凸凹した骨の形になじむ形に作られています。入れ歯を安定させるための留め金をかける歯が無い方の義歯では特に、咬んだ際、粘膜にあたる部分が吸い付くような設計が求められます。人工の歯で咬むとき、転覆せずにむしろ収まるような力がかかる咬み合わせを作る必要もあります。無くなった歯や歯ぐきの形をただなぞらえるのではなく、義歯には機能のための形態が与えられています。

このように、歯周病などの理由で歯を失ったとき、無くなった歯や歯ぐきの機能を「義歯」で治します。義歯というのは色々な種類を含むことがありますが、今回はいわゆる「入れ歯(デンチャー)」の製作方法について説明いたします。

デンチャーは、歯が残っているかどうかで大きく2つに分類されます。歯が全て無い方のためのフルデンチャー(全部床義歯・総義歯)はレジン(プラスチック)や、症例によっては金属で作られ、主に吸盤のような吸着力、頬粘膜や舌の動き、噛み合わせのバランスなどで口の中におさまります。一方、歯が残っている方のパーシャルデンチャー(部分床義歯)には、フルデンチャーの要素に加えて、歯にかける留め金(クラスプ)やパーツをつなぐ部分などの複雑な組み合わせがあります。

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(出所:Shutterstock)

義歯の制作には学術的な知識と技術、さらに経験が必要になります。また、直接治療を行う歯科医師と、ラボで長い時間をかけて義歯を作る国家資格を持つ歯科技工士、自分の口に受け入れる患者さんの協力が不可欠と言えるでしょう。今、義歯制作を支える匠の技とも言える技術を持つ、歯科技工士の人数が不足しつつあります。就業している歯科技工士の50%弱が50歳以上である一方、養成学校への入学者が30年前の約1/3の1000人弱となっていることが指摘されています¹)。これを補う方法としてクローズアップされているのが3Dプリンター技術です。歯科はもともと工業や医科などの領域で使われている方法が転用されることが少なくありません。その中でも、近年、急速に発展しているこのテクノロジーは現在進行形で開発が進められています。

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