2022/04/20

ヘルスケアの現場から考えるデジタルヘルス(第5回)

地域医療連携ネットワークサービス「ID-Link」が複数の医療機関で診療情報を共有

医療コミュニケーション支援, 臨床医

「ID-Link」が医療と介護をつなぎ、双方向での情報連携を実現

 

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(出所:Shutterstock)

・ICTを用いた地域包括ケアシステム
日本は、世界に例を見ないスピードで高齢化が進行している。65歳以上の人口が総人口に占める割合(高齢化率)は2020年時点で28.8%であり、2050年には36%に達する見込みである。そこで、厚生労働省は、2025年を目途に、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進している。そして、情報共有に有効な手段として、情報通信技術(ICT)の利用を推奨している。
これを受けて、様々な方法でICTを活用した地域包括ケアシステムの構築が進められている。いくつか例を挙げると、

  1. テレビ電話で、遠隔地に住む患者や住民と、専門医や保健師をつなぐ。
  2. 患者が持つ電子お薬手帳に、病院、診療所、調剤薬局からの処方・疾病情報を集約して、参加事業者が閲覧できるようにする。
  3. 電子掲示板を用いて、在宅療養中の患者のケア情報を共有する。
  4. 複数の医療機関をインターネット回線で接続し、診療情報を共有するシステム(地域医療連携システム)によって、医療者がリアルタイムに必要な情報を閲覧することができるようにする。

このように様々な取り組みが行われているが、この記事では4.の地域医療連携システムについて紹介する。

・複数の医療機関をつなぐ地域医療連携ネットワークサービス「ID-Link」
高齢者は複数の慢性疾患を抱えていることが多い。複数の医療機関を受診している場合、個別の医療機関で治療の全体像を把握することは困難である。そこで、それぞれの医療機関が保有している診療情報を共有して、地域の医療機関の連携を円滑にする必要がある。株式会社エスイーシーが提供する「ID-Link」*1は、異なる医療機関に分散している診療データを統合・共有する全国統一のクラウドサービスだ。

「ID-Link」を利用することで、個人情報の取り扱いに同意した患者の診療情報を他の医療機関等と共有することができる。具体的には、処方や注射の内容、検査結果、医用画像などを閲覧することができる。連携医療機関が保有している診療情報が時系列で1画面に表示されるため、診療経過をスムーズに把握することが可能だ。診療情報を共有することで、二重投薬や薬剤禁忌等を防ぎ、重複する検査を省くことができるなど、メリットは大きい。
「ID-Link」は、データリンク型のサービスなので、診療情報を共有する際に大規模なデータベースを必要としない。各医療機関に保存されている診療情報を使用するため、大掛かりな設備投資も不要だ。また、全国の患者IDの紐付とアクセス権限をサービスセンターで一元管理しているため、複数の地域との連携に発展させることもできる。セキュリティ面では、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠したネットワークを採用しており、高度なセキュリティレベルでの情報共有が可能だ。

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(出所:株式会社エスイーシー)

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