2022/05/06
デジタルテクノロジーによって進化する歯科治療(第5回)
【後編】国境を越えたデジタル技術の提携ー日本の歯科産業の戦略
「国際的な協業によるデジタルソリューションへの新たな一歩」
前編では、歯科インプラントに関する京セラのデジタル技術について質問しました。後編では、医療用製品メーカーである同社が、デジタルのインプラント歯科技工を手がけるオーストラリアの企業(Osteon Medical社)が日本に設立したオステオンデジタルジャパン株式会社と提携するなど、世界的な動向を示すその前線の展望について尋ねました。質問に答えていただきましたのは、引き続き、京セラのメディカル事業部デンタル営業部責任者の吉田 亨氏です。
賀茂: なぜ、これまでインプラントの実績がある京セラが海外の企業と提携を決定したのでしょうか?Osteon Med-ical社を選んだ理由とは?
吉田氏: 日本の歯科インプラント市場においてシェア上位3社は海外メーカーが占めていますが、彼らはCAD/CAMで上部構造(骨に植えたネジのようなインプラントに取り付ける人工の歯の部分)を独自で製造・加工するミリングセンターといわれるビジネスを既に展開しているという背景がありました。私たちにとっても、上部構造製作のCAD/CAM対応ができるかどうかはインプラント市場でのシェア確保のためには重要な課題でした。そのような環境下で、上部構造製作のノウハウが無く自社でミリングセンターを持つことがこれまで出来なかった私たちは、補綴物(つめ物・かぶせ物)製造を専門とする国内の技工所、数社と協業しました。これによってCAD/CAMに関する対応を行い、2017年に発売した現在の主力製品「京セラ製インプラントシステム」のシェアを拡大してきました。
今回、オーストラリアに本社があるオステオンデジタルジャパン株式会社と提携した最大の理由は、海外インプラントメーカーや国内の大手技工所でも対応出来ない独自のデジタルソリューションを保有していることです。競合と差別化を図ることで新規ビジネス展開が出来る絶好の機会と考えたからです。
賀茂: 世界中に多くのインプラントメーカーがあり、手術を行う歯科医師はそれぞれのシステムを使いこなす必要があります。これまで骨に埋めるインプラントを作ってきた京セラは、自社のインプラント体にのみ対応するのでしょうか?
吉田氏: 京セラのインプラントは当然ですが、海外大手メーカーの上部構造製作も対応します。
賀茂: インプラントの手術をするときに、顎の骨がしっかりある場所と、噛み合わせる人工の歯をどのように並べるかは、必ずしもまっすぐ理想的な位置関係にはない場合もあります。補綴を専門とするオステオンデジタルジャパン株式会社との提携では、トップダウントリートメント(補綴などからインプラント体の埋入する位置などを総合的に決定)に関するソリューションへの参画と捉えてよろしいでしょうか?
吉田氏: 補綴主導・外科主導ということは関係無く、総合的にインプラントの上部構造製作に特化したCAD/CAMソリューションビジネスを展開します。
このような回答からは、オステオンデジタルジャパン株式会社という新しいパートナーを得て、より自由度を上げて新しい技術に取り組む姿勢がうかがえます。
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