2022/05/19
臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術 (第18回)
遠隔で質の高い集中治療を届ける、T-ICU 【前編】
専門医がいなくても、遠隔で質の高い集中治療を
私が現在勤務する病院や、これまで医師として勤務してきた病院の中で、集中治療科医がいたというのは大学病院のみでした。国内の大部分の病院では集中治療科医が不足しているため、専門でない医師が集中治療に取り組まざるを得ない場合が多くあります。特にコロナ診療における重症者への対応は、これまでの集中治療の経験とはまた違った難しさを感じているため、集中治療科医がいたら良かったなと日々実感しています。
このような問題の解決に向けて、遠隔相談システムと遠隔モニタリングシステムの事業を展開し、遠隔で質の高い集中治療を届ける、株式会社T-ICUというスタートアップがあります。
T-ICUは集中治療分野の抱える課題として3つを掲げています。
・集中治療科医不足
・都市部と地方の医療格差
・医療スタッフの負担増加
これらの課題を解決するために、以下の2つのサービスを提供しています。
① 遠隔相談システム「リリーヴ」
重症患者の治療には、呼吸・循環管理、鎮静・鎮痛、感染症治療などの全身管理が24時間必要となり、高度な知識と経験が求められます。
遠隔相談システム「リリーヴ」は、全国的に専門家が不足する重症患者診療の現場を集中治療科医・集中ケア認定看護師で構成されたメディカルチームが24時間365日サポートします。命に関わる重症患者診療を担う医療スタッフの不安に寄り添い、最新の知見と豊富な経験でサポートしています。
医師として勤務していると、「こういう状況の時、どうすると良いのだろう」という細かな疑問は多々感じながら、実際は調べたりしても解決できなかったり、経験豊富な医師にしかわからないけれど、休日や時間外で聞くことができないという現実があるかと思いますので、専門医に遠隔で気軽に相談できるというのは集中治療を行う上で安全面においても非常に重要だと考えます。
T-ICUリリーヴ製品紹介動画(出所:株式会社T-ICU)
② 遠隔モニタリングシステム「クロスバイ」
COVID-19の流行により、COVID-19患者受け入れ病院では医療の提供と医療従事者への感染対策の両立が求められるようになりました。重症者ほどより密接な治療や看護が必要となる一方、個人防護服の不足が続き、診療と感染対策の両立が非常に困難となってきています。
「クロスバイ」を導入することで、ベッドサイドに配置した高性能カメラにより、これまでにない患者観察が可能になります。患者の表情や顔色、呼吸様式の観察までもが可能となり、さらに人工呼吸器を含む各種医療機器とも接続することで、多面的な患者情報を院内の離れた場所へ届けます。
実際に私が重症コロナ患者の診療を行っていた際に、頻回な個人防護服の着脱などが感染リスクを増すことが懸念されていました。しかし、わかっていながら、病室への出入りでは、やむを得ず防護服の着脱を行わなければならないということでかなり苦労しました。このような技術の導入で本当に必要な時にのみ、ベッドサイドで実際に患者さんの診察を行うことで、過度なストレスなく診療に従事できるかと思います。
T-ICUクロスバイ製品紹介動画(出所:株式会社T-ICU)
次回は、T-ICUの技術統括部部長および取締役の遠山文規氏へのインタビュー内容をご紹介させていただきます。
(次回に続く)
【出典】
- 株式会社T-ICU ウェブサイト https://www.t-icu.co.jp/
この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。
本記事に掲載されている情報は、一般に公開されている情報をもとに各執筆者が作成したものです。これらの情報に基づいてなされた判断により生じたいかなる損害・不利益についても、当社は一切の責任を負いません。記事、写真、図表などの無断転載を禁じます。
Copyright © 2022 LSMIP事務局 / CM Plus Corporation
連載記事