2022/06/09
医学博士が解説するリハビリテーションとデジタル技術(第3回)
MELTINの手指用ロボットニューロリハビリテーションとは 【前編】
サイボーグ技術がもたらすリハビリテーションへのイノベーション
ニューロリハビリテーションにおける先端ロボット技術
我が国の脳卒中有病者数は約112万人にのぼり1)、脳卒中の代表的な後遺症である運動麻痺は患者の復職や社会復帰、日常生活の自立を困難にしています。また、脳卒中片麻痺患者では、上肢の機能は下肢に比べて回復が困難であることが多く2)、「文字が書けない、パソコンが使えない、家事ができない」といった理由で社会復帰が困難となっている人が非常に多く存在します。脳卒中患者片麻痺患者にとって、リハビリテーションによっていかに上肢の麻痺を回復させられるかが、その後の人生を大きく左右させる課題となっています。
近年、上肢のニューロリハビリテーション*1において、電気刺激により促通反復療法*2をアシストするロボットや、設定したリーチ動作*3を反復して行うことで麻痺の改善を図るロボットなどが登場しています。なかでも特に注目され、臨床の現場から期待を寄せられているのが、株式会社メルティンMMI社(以下、MELTIN)の「手指用ロボットニューロリハビリテーション装置」です。
MELTINのサイボーグ技術
2013年に創業されたMELTINは、「サイボーグ技術によって身体的な制約を取り払い、年齢や身体の状態によらず誰もが自分らしく活躍ができる世界を創ること」をビジョンとして掲げており、生体信号処理技術とロボット技術を利用した医療機器やアバターロボットなどの研究開発・事業化を行っています。また、2016年には三菱東京UFJ銀行「Rise Up Festa」の優秀賞と審査員特別賞、CEATEC AWARD 2018のデバイス/テクノロジ部門で準グランプリを受賞するなど、最先端のサイボーグ技術を用いた事業は非常に注目されています。特に、「生体信号」と「生体模倣ロボット技術」において卓越した技術を有しており、ロボットリハビリテーションにイノベーションをもたらす存在として期待されています。
MELTIN開発のアバターロボット 「MELTANT-α(メルタント・アルファ)」
(出所:MELTIN)
MELTINは、独自の生体信号処理アルゴリズムを開発することで、多彩な生体信号を高精度かつリアルタイムで解析することを可能にしました。これは、非常に複雑な動作を瞬時に行い、特別な訓練なしで直感的にロボットの操作ができることを意味します。また、人の手を生体模倣することから着想を得たロボットハンド制御機構は、人間の手の複雑な動作をワイヤー駆動によって再現し、従来のロボットにはない力強く繊細な動きが、人の手と同等のサイズ・重量でできるようになりました。
手指用ロボットリハビリテーション装置
「生体信号」、「生体模倣ロボット技術」に「AIによる解析技術」が加わることで、MELTINの手指用ロボットニューロリハビリテーション装置が実現しました。複雑な筋電データ*4をAIと独自のアルゴリズムで解析することで運動意図を瞬時に識別し、効果的なリハビリテーションにつながる運動アシストを提供することが可能になっています。
(次回に続く)
【脚注】
【出典】
この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。
【株式会社メルティンMMI】
THE VISION of MELTIN (出所:MELTIN)
2013年創業のサイボーグ技術開発のベンチャー企業です。独自の「生体信号処理技術」と、人の身体を再現する「ロボット技術」という2つのコアテクノロジーを確立し、「アバター」「医療」の2つの軸で、新領域のサイボーグビジネスを展開しています。2016年には世界初のサイボーグオリンピックに出場。2018年には、サイボーグ技術を用いたアバターロボットのコンセプトモデル「MELTANT-α」を、2020年には、作業現場での実証実験用「MELTANT-β」を発表しました。
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