2022/07/26
米国eHealthジャーナル第69号
FDA、ASDの早期診断支援ツール「EarliPoint Evaluation」を承認
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デジタル・バイオマーカー基盤の客観的指標を用いた初のツール
小児における自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断および治療用製品の開発に注力するジョージア州アトランタ拠点のデジタルヘルス企業、EarliTec Dx(以下、EarliTec)は6月10日、 生後16~30カ月の乳幼児を対象とした医師向けのASD早期診断支援ツールとして、同社が開発した「EarliPoint Evaluation」が510(k)申請経路でFDAから承認されたと発表した。EarliTecによると、医師がASDの早期診断を行うのを支援するための客観的指標に基づいたデジタルツールがFDAから承認されるのは今回が初となる。
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、小児ASDは44人に1人の割合で見られる罹患率の高い疾患であるが、小児患者が専門家から診断を受ける際の平均年齢は4歳4カ月であり、脳の発達における最も重要な期間が過ぎていることが指摘されている。
EarliTecは2019年に設立されたスタートアップ企業で、今年2月に完了したシリーズA投資ラウンドで1,950万ドルを調達し、デジタル・バイオマーカーを基盤としたASDの早期診断製品開発に取り組んできた。デジタル・バイオマーカーとは、デジタル・ツールから生成される消費者起点の行動データおよび生理学的データで、健康関連アウトカムに影響を及ぼしたり、健康アウトカムの説明や予測に役立てることが可能なものを指す。
EarliPoint Evaluationは、映像を視聴する小児の眼の動きや視線・注視点を捉えて数値化するDQSVE(Dynamic Quantification of Social-Visual Engagement)ツールを利用して、医師が客観的にASDの診断を下したり、症状の重篤度の測定することを支援する。Emory School of MedicineやYale Universityの研究者らによって開発されたこの技術は、2021年にFDAから画期的医療機器指定を獲得していた。
小児ASD患者向けのデジタル製品を開発する企業はEarliTecに限られない。小児向けの行動医学デジタルプログラムに特化するカリフォルニア州パロアルト拠点のCognoaは2021年6月に、ASDの早期診断を助けるデジタル・セラピューティクス(DTx)の「Canvas Dx」について、デノボ(de novo)申請経路でFDAから承認を獲得している。Canvas Dxは、自閉症を対象とする初の処方箋DTxとなった。Canvas DxもFDAから画期的医療機器指定を受けていた。Canvas Dxは、保護者から取得した2種類のデータ ―― 1)Harvard Medical SchoolとStanford Medical Schoolが5年間かけて開発した小児の発達に関する質問票への回答、2)家庭内での子供の行動・様子を記録した動画、――を集約してCognoaが構築したビッグデータに機械学習アルゴリズムを組み合わせたアプリケーションである。Canvas Dxは、早ければ生後18カ月でのASD診断を可能にすることを意図している。なお、Canvas Dxの適応は診断の補助であり、診断を目的とした単独での利用は意図されていない。
(了)
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