2022/07/26
米国eHealthジャーナル第69号
薬局チェーン大手のWalgreenが臨床試験事業に新規参入
患者データ・疾病リスク分析, 臨床試験, ジャーナル第69号, Walgreens, 薬局
患者ビッグデータを駆使した被験者経験の改善とアクセス向上
薬局店舗のWalgreensを全米で約9,000店舗展開する米薬局チェーン大手のWalgreenは6月16日、製薬企業が実施する医薬品開発研究への被験者アクセスと定着率を向上させるための臨床試験事業を新規に立ち上げると発表した。
臨床試験の被験者募集と登録をめぐる状況は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって悪化している。80%近くの臨床試験では、予定した時間内に被験者登録の目標を達成できず、費用の増大につながる試験遅延の原因となっている。また医薬品の20%では民族間で応答率にばらつきがあることが知られているが、現在、米国で実施される臨床試験の参加者は、白人が75%、ヒスパニック系が11%、黒人やアジア系が10%未満と白人に大きく偏っており、臨床試験の人種的、民族的多様性を高めるための措置が急務となっている。
Walgreenでは今回、患者中心の3つのサービスラインを拡張することでこれらの課題に取り組み、臨床試験における被験者経験の改善を目指す。具体的には、1)Walgreenが擁する広範囲におよぶ薬剤データおよび患者の同意を取得済みの臨床データを基盤とした、多様な患者集団と様々な疾患とのプロアクティブなマッチング、2)分散型臨床試験(DCT)技術として利用が可能な、Walgreens実店舗や提携先のデジタルサービスを通じた試験のワークフロー改善とデータ収集、および傘下のスペシャルティ薬局や、投資先の関連サービスを通じた、スペシャルティ医薬品のための新しい臨床試験アプローチの支援、そして3)リアルワールド・エビデンス(RWE)に基づく洞察提供、の3つのサービスを提供する。
1)については、技術牽引型のアプローチによる被験者の同定と大規模な臨床試験参加者レジストリの構築により、それぞれの試験について適格性を持つ被験者のマッチングをスピーディに行うことができるという。2)については、店舗内クリニックサービスを提供する「Health Corner」や「Village Medical」をはじめとする同社の資産を活用することで、在宅、バーチャル、対面ベースで被験者に直接関与することが可能だと説明している。3)については、RWEに基づく洞察の提供により、臨床試験のデザインや多様性の改善、試験実行の最適化を支援する。
Walgreenの持ち株会社であるWalgreens Boots Allianceは、消費者中心のヘルスケアソリューションに注力しており、今回の臨床試験事業の新設を、次なる成長エンジンとして位置づけている。
(了)
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