2022/08/23
米国eHealthジャーナル第71号
ウェアラブル・デバイスの広範な採用における3つの課題
研究・調査, ウェアラブル, ジャーナル第71号, JMIR
患者のみならずプロバイダーへのトレーニングが必要
ウェアラブル・デバイスの広範な採用における課題を浮き彫りにした研究論文、「Wearing the Future—Wearables to Empower Users to Take Greater Responsibility for Their Health and Care: Scoping Review」が7月13日付で JMIR mHealth and uHealth誌に掲載された。ウェアラブルは、患者による疾病の理解と症状の管理を支援する強力なツールとなり得るが、効果的に利用されるためには、解決されるべき幾つかの課題が存在するという。
研究班は今回、欧州と米国で発表されたウェアラブルに関する20件の試験についてメタ解析を行った。これらの試験の被験者数は合計7,000名に上る。その結果、研究班は、効果的なウェアラブルの利用における3つのテーマとして、1)医療サービスプロバイダーの役割とウェアラブル使用の促進によってプロバイダーが得られるベネフィット、2)患者の行動変容を促進する仕組み、3)ウェアラブル使用における障壁、の3つを特定した。
ウェアラブルは、リアルタイム患者データへのアクセスをプロバイダーにもたらすものであり、そのデータは、診療時に患者とのコミュニケーションから得られる情報よりも臨床的有用性が高く包括的である可能性が高い。しかし、常時モニタリングと適宜のフィードバック提供は、プロバイダーの仕事を増やすという側面もある。また、消費者向けウェアラブルの中には、データの精度面で臨床での用途に向かないものもある。研究班によると、全てのヘルスシステムがウェアラブル採用に積極的であるとはいえない。ウェアラブルの広範な採用のためには、医師や病院スタッフなどプロバイダー側へのトレーニングを実施することによって、エンゲージメントの向上と行動変容をもたらすよう、プロバイダーが患者に働きかけることを促進にする仕組みが必要だという。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下において、ウェアラブルの重要性はさらに顕著となった。ウェアラブルは、バーチャル診療を実現するツールとして患者のケアニーズを満たすとともに医療機関の医療崩壊を未然に防ぐことにも寄与した。ウェアラブルは、健康増進や病気の予防、慢性疾患の管理まで幅広く役立つ可能性があることから、ウェアラブルがもたらすベネフィットは、ポストCOVID-19においても重要であり続けると研究班は論じている。また、様々な種類のウェアラブルが異なる患者ニーズに対応できる可能性がある。
研究班によると、ウェアラブルの使用を妨げる要因は複数ある。当初は使用に意欲的であった患者も、興味を失ったり、デバイスを紛失したり、装着し忘れたりするなど、一貫した利用が望めないケースもある。ウェアラブルのデザイン面、コスト面、技術面での障壁のほか、プライバシー懸念も使用を妨げる要因だ。利用の回避につながるネガティブな印象を払拭するため、こういった障壁や懸念は対処されなければならない。
IT市場に特化する市場調査会社のInternational Data Corporation(IDC)によると、ウェアラブル・デバイスの世界市場における出荷台数は前年同期比3%減となり、出荷台数が初めて減少に転じた。IDCは全体の出荷減の主な要因として、「ウェアラブル・デバイスは数年にわたる急成長を経てパンデミックの間にはさらに成長が拡大したが、消費者はウェアラブル・デバイス以外の技術に向かうようになっており、需要が落ち着いた」と説明している。このデータは、市場が頭打ちになる可能性を示唆している一方で、ウェアラブル技術に引き続き根強い需要があることも示している。
(了)
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