2022/09/13
米国eHealthジャーナル第72号
DOJ、ヘルスケア不正行為で36社を起訴
テレヘルス企業などに罰金12億ドルを請求
米司法省(DOJ)は7月20日、全米規模で実施した捜査の結果、ヘルスケアに関連する不正行為(ヘルスケア不正行為)を理由として36社を起訴したと発表した。DOJは総額12億ドルの罰金支払いを求めている。請求額のうち10億ドル以上は、テレヘルス企業が絡んだ心血管分野や癌分野の遺伝子テスト、耐久性医療機器(DME)に関連する不正行為だった。
今回の捜査は主に、テレヘルス企業に雇用されたヘルスケアプロバイダーもしくはテレヘルス・サービスを提供するヘルスケアプロバイダーが、遺伝子テストやDMEを注文するために患者紹介状(リファラル)を書き、臨床ラボやDME企業からキックバックあるいは賄賂を受け取るという慣行を対象に実施された。DOJによると、これらのヘルスケアプロバイダーは患者とのやり取りを全く行わないか、電話での簡単な会話のみで済ませ、治療上の必要性とは無関係に高額かつ不必要な遺伝子テストやDMEを注文し、メディケアに請求を行っていた。DOJによると、キックバックや賄賂を受領する目的でこういったリファラルを出す不正の件数は急増している。
米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを背景としてテレヘルスの利用が急増した。民間保険のほか、公的保険を監督するメディケア・メディケイド・センター(CMS)も、テレヘルスに対するメディケア償還の規制を緩和し、これがテレヘルス利用件数の拡大に寄与した。規制の緩和は、テレヘルスの利便性を活用してCOVID-19感染拡大を防ぎながら、メディケア受給者の健康維持を図るための措置である。
13の連邦裁判区にまたがって進行中の複数の裁判のうち、複数の臨床ラボを運営する事業主を被告とした裁判では、被告が1,600万ドルをマーケターに支払い、遺伝子テストが購入されるたびにマーケターがテレメディシン企業やコールセンターにキックバックを支払っていた件を審理している。訴状によると、遺伝子テストの結果は治療方針の決定に利用されていなかった。
また米国内外のテレメディシン・ネットワークにおいて支配的な地位にあるマーケティング企業を被告とする別の裁判では、治療上意味のない遺伝子テストやDMEの購入にメディケア受給者を合意させるために虚偽の宣伝を行い、数千人に詐欺行為を働いていた件について審理している。
心血管分野の遺伝子テストについては、CMSがスクリーニングツールとしての有用性を認めていない。CMSも同日、DOJの起訴とは別件で、52のヘルスケアプロバイダーに対し、同様の不正行為を理由に行政措置をとったと発表している。
(了)
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