2022/09/27

米国eHealthジャーナル第73号

Amazon、「Amazon Care」でメンタルヘルスサービスの提供へ

提携, テレヘルス, Ginger, ジャーナル第73号, 精神疾患, Amazon

雇用主向けのAmazon Care提供は年内で中止

一部報道は8月10日、Amazonが同社のハイブリッド・プライマリケア・プログラムである「Amazon Care」で、メンタルヘルスサービスの提供を開始すると報じた。Amazon Careは、ワシントン州シアトル在住の同社従業員向けにバーチャル・ケアと対面ケアを組み合わせた最良のハイブリッドケアを提供する目的でAmazonが2019年9月に立ち上げたパイロット・プログラム。当初からAmazonは、シアトル以外の地域において、雇用主向けにAmazon Careを展開する計画を明らかにしており、現在は全米の複数都市でAmazon Careが利用可能となっている。

Amazon Careでは、テレヘルス、オンラインチャット、医薬品メールオーダー、往診手配などのサービスを提供する。ワクチン接種や定期健診など、対面ケアが必要となる場合には、Amazon Careの往診依頼アプリを利用して、自宅もしくは職場にモバイルケア看護師を呼ぶことが可能だ。医師、ナース・プラクティショナー、看護師からなるケアチームには、24時間年中無休でバーチャルによりアクセスすることが可能で、ケアやアドバイスをいつでも受けることが出来る。新たに追加されるメンタルヘルスヘルスサービスは、従業員のためにAmazon Careを購入する雇用主顧客のためのアドオン・プログラムで、デジタル・メンタルヘルスケアサービス、Gingerとの提携の下で提供される。

Gingerは、Massachusetts Institute of Technology(MIT)内の研究所であるMIT Media Labから誕生したバーチャルケア・プラットフォームで、メンタルヘルスケア分野において様々なサービスをスマートフォンアプリを通じて提供している。テキストメッセージ(SMS)でのコーチングや、セルフガイド形式のさまざまなコンテンツのほか、より高いレベルのケアが必要な場合にはテレヘルスによる診察を受けることもできる。テキストメッセージによるコーチングは24時間対応だ。また、処方箋医薬品のメールオーダー(通販による自宅配送)も可能。

Gingerは2021年8月、消費者向けの瞑想/マインドフルネス・アプリを手掛けるHeadspaceと合併することで合意し、同年10月に合併取引を完了させている。GingerとHeadspaceはいずれも2010年に設立され、バーチャル・メンタルヘルスケア分野で大きなプレゼンスを誇るデジタルヘルス企業である。両社の合併により誕生した新会社のHeadspace Healthは、メンタルヘルスとウェルビーイングのための、世界で最も包括的かつアクセスし易いデジタル・プラットフォームを擁する。Gingerは現在もそのブランド名を維持し、大規模雇用主向けのパッケージを提供するなどB to Bに力を入れている。米国では、従業員のためにメンタルヘルスケアに対処するデジタルプログラムを保険カバレッジに含めて提供する雇用主が多く、Gingerをはじめ、競合デジタルヘルス企業のLyra HealthやUnmind、Modernなどは雇用主に照準を定めている。

Amazon Careでのメンタルヘルスサービス提供は、米国の雇用主顧客のニーズに対応するものだ。Amazonは7月には、ハイブリッド・プライマリケア・プロバイダーのOne Medicalを買収することでOne Medicalと合意するなどヘルスケア事業の拡大に努めてきたが、8月24日には、雇用主向けのAmazon Careの提供を2022年末で中止することを明らかにした。Amazonは社員宛ての電子メールで、Amazon Careは「雇用主顧客にとって持続可能な長期的ソリューションではなかった」と中止の理由を説明した。

(了)


本記事掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2022 株式会社シーエムプラス LSMIP編集部

連載記事

執筆者について

関連記事