2022/09/27
米国eHealthジャーナル第73号
Babylon Holdings Limited、2021年第2四半期の決算を発表
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米国市場でのビジネス拡大で売上が前年同期比360%増
英国拠点のBabylon Holdings Limited(以下、Babylon)は8月9日、2022年第2四半期の決算を発表した。Babylonは、人工知能(AI)ドクターとして機能するトリアージ・チャットボット・アプリを手掛けるBabylon Healthの持株会社で、2021 年10月に特別買収目的会社(SPAC)であるAlkuri Global Acquisitionとの合併取引を完了し、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。
Babylonのスマートフォンアプリでは、チャットボットに症状を伝えると、その症状をAIドクターが分析し、受診の必要性の有無なども含め、医療の「診断」にまで踏み込むような回答をしてくれる。結果によって、テレヘルスを利用した医師のバーチャル診療を推奨したり、医療機関での受診予約まで行う。
研修中の一般開業医(GP)が受ける英国の最終試験「MRCGP」では、過去5年間での人間の医師の平均スコアが72%だったのに対し、Babylon のAIドクターは、81%のスコアを獲得し、「合格」することに成功している。AIはどんどんデータを蓄積し、継続的に学習して行くため、今後さらなる診断の精密さの向上が期待されている。
Babylonによると、第2四半期の売上は前年同期の5,750万ドルから360%増の2億6,540万ドルだった。同社は現在、世界最大のヘルスケア市場を擁する米国でのビジネス拡大に照準を合わせている。AIチャットボットを基盤とするBabylonのヘルスケアサービスの米国提供は、2020年1月から開始されたばかりだが、売上の大部分が米国市場に由来している。なかでも、売上増をけん引しているのは、米国で展開する価値に基づくケア(Value Based Care、以下VBC)事業と同社が呼ぶ保険のサブコントラクト事業で、VBC事業の第2四半期売上は前年同期比524%増の2億4,410万ドルだった。 VBC事業においてBabylonは、保険料こそ徴収していないが、ペイヤーに雇われてメンバーに対するケア提供の財務リスクを負う。様々なヘルスケアサービスを提供するという点で、VBCの業務内容は保険会社に類似する。
VBCを利用するメンバー数は前年同期から220%増加し、6月30日時点で26万9,000名となった。VBCメンバーの内訳は、低所得者向けの公的保険であるメディケアが82%、高齢者向けの公的保険であるメディケアが12%、民間保険が6%。
Babylonによると、同社は2022年7月にはニューメキシコ州のメディケア・アドバンテージ(MA)メンバー1万人をカバーするVBC契約を締結。これを受けてVBC事業におけるメディケア由来の売上は40%以上拡大するという。MAは、連邦政府から業務委託を受けた民間保険会社が、受給者にメディケア・サービスを提供する仕組み。メディケア費用諮問委員会(MedPAC)の2022年1月の発表によると、2021年にはメディケア受給者の46%にあたる2,690万人がMAプランに加入していた。
上半期の最終損益は1億5,710万ドルの赤字となった。前年同期には6,490万ドルの赤字を計上しており、損失幅は拡大した。2022年通年の売上については、これまでに発表したガイダンス予測を据え置き、引き続き10 億ドル超としている。
(了)
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