2022/09/27
米国eHealthジャーナル第73号
Abridge、シリーズA投資ラウンドで1,250万ドルを調達
ジャーナル第73号, Augmedix, Abridge, 言語技術, 音声技術, AI技術, VC投資・M&A・決算, 医療コミュニケーション支援
医師の診療記録作成を支援するAIツール
人工知能(AI)基盤の診療記録作成に注力するペンシルベニア州ピッツバーグ拠点のスタートアップ企業Abridgeは8月11日、 シリーズA-1資金調達ラウンドで1,250万ドルを調達したと発表した。Wittington Venturesが主導した同ラウンドには、同社の既存投資家であるUnion Square Ventures、Bessemer Venture Partners、Pillar Venture Capital、UPMC Enterprisesのほか、新規投資家として、Whistler Capitalと、カナダのコンピュータ科学者でAIの専門家でもあるYoshua Bengio氏が加わった。
医師は、多くの書類や請求書の作成などのアドミニ作業に多大な時間を費やしており、特に診療記録を作成する負担は、米国の医療システムにおける最大の課題の1つとなっている。現在、診療記録の作成は患者の電子医療記録(EHR)上で行われており、医師らは1日の数時間を情報入力に費やさなければならない。医師たちは書き起こし用のソフトウェアを利用したり、「メディカルスクライブ」と呼ばれる実際に横でノートをとる診療記録作成担当者を雇用したり、もしくは海外にあるエージェンシーに音声を送って書き起こしを外注したりすることで、その業務からの解放を試みている。そうすることで、診察中に、従来のようにコンピュータ画面を見ながらではなく、患者と向き合って話をすることができる。
Abridgeは、医師と患者の会話を録音して書き起こしを実行する医師向けのAIツールを構築している。AIツールはそれらの情報を整理して要約し、患者の健康状態、症状、ケアプランといった重要なデータを抽出する。作成された診療記録はEHRにアップロードされる仕組みだ。Abridgeによると、このツールをテレヘルスサービスと統合することも可能だ。Abridgeは、今回調達した資金を、AIツールの販促および技術向上に利用するという。
Abridgeは、シードおよびシリーズA投資ラウンドで調達した1,500万ドルの資金を基盤として2020年10月に設立されたスタートアップ企業。設立当初は、患者が自身の医療ケアを追跡・理解するのを支援するアプリとしてAIツールを位置づけていた。
Abridgeと同様のサービスで医師を支援するSukiは、2020年3月のシリーズB投資ラウンドで2,000万ドル、その後2021年12月のシリーズC投資ラウンドで5,500万ドルを調達している。
ほかにも、オフショア・メディカルスクライブを提供するAugmedixが2020年10月に、 特別買収目的会社(SPAC)であるMalo Holdingsとの合併によりOTC市場であるOTCQBの登録銘柄となった。OTC市場はニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダックへの上場準備市場としての性格を有している。患者を診察中の医師は、Augmedixから提供される「Google Glass」を使用して、音声コマンドで患者のEHRを呼び出し、コンピュータを利用することなく「Google Glass」上に必要なデータを表示して閲覧できる。診察の様子は、Augmedixの米国内およびオフショア拠点で働くメディカルスクライブにライブ配信され、リアルタイムで記録が作成される仕組みだ。
出典:Augmedix
(了)
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