2022/10/11
米国eHealthジャーナル第74号
テレヘルスが医師の残業を増やす可能性
ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルス(NYULH)の研究
一部報道は8月19日、テレヘルスが医師の残業を増やす可能性を示唆する研究、「The Impact of Telemedicine on Physicians’ After-hours Electronic Health Record “Work Outside Work” During the COVID-19 Pandemic: Retrospective Cohort Study」がJMIR Medical Informaticsに掲載されたと報じた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期間中に、テレヘルスを利用した遠隔医療の利用は劇的に増加したが、それが医師の業務に与える影響はよく理解されていない。そこで、ニューヨーク大学の研究班は、遠隔医療への移行がニューヨーク大学ランゴーン・ヘルス(NYULH)において、電子カルテ(EHR)上で行う医師の作業負荷にどのような影響を与えたかを評価した。
NYULHは、ニューヨーク市にある大規模な学術医療システムで、4つの病院と500以上の外来診療所に8,000人以上の医療従事者を擁している。この医療システムは、EpicのEHRシステムで接続されており、患者アカウント数は750万件以上に上る。COVID-19のパンデミック以前には、救急医療でのバーチャル診療、整形外科における術後創傷チェック、一部のメンタルヘルスサービスなどのパイロットプログラムを通じて、限定的なテレヘルスサービスを提供しているのみだったが、NYULHはパンデミック時には遠隔医療サービスを急速に拡大し、プライマリケア、外来専門診療、アージェント・ケアにおいてもテレヘルスによる診療を提供した。
研究班は、パンデミック前、パンデミック急性期、パンデミック急性期後にテレヘルスサービスを提供している医師を対象として、EHRベースの残業とテレヘルス占有率(遠隔医療によって提供されるケアの提供ケア全体に占める割合)および臨床作業負荷(医師一人当たりの診療患者人数)の関連付けを試みるEHRベースのレトロスペクティブコホート研究を実施した。この研究には合計2,129名の医師が含まれた。
その結果、パンデミック急性期の間、テレヘルスを介して提供されたケアの量はすべての医師で顕著に増加していた一方で、患者の数は減少していたことが分かった。そして、「Work outside work(WOW)」とも呼ばれる医師の残業の時間は、テレヘルス占有率の大きい医師ほど「有意に」増加することが明らかにされた。
この研究により、テレヘルスは対面診療と比較して効率性で劣ること、また医師のWOWによる負荷を増やすことが示された、と研究班は述べた。 研究班は、複数の要因がWOWの増加をもたらしている可能性があると述べた。主な要因の1つとして、研究班はテレヘルス・システムの初期導入時にそのデザインと配備における組織面および技術面での非効率性が明らかになったことに言及し、こうした非効率性がWOWによる負荷増加と関連している可能性を示唆した。また、ケアの新しい提供方法やスケジュール調整など、これまでのルーティーンから外れたことがWOWの増加につながった可能性もあるという。
全体として、テレヘルスは医師が直面する課題をすべて解決できる万能薬ではないことが浮き彫りとなった、と研究班は述べた。
(了)
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