2022/10/25

米国eHealthジャーナル第75号

エストニアのVeriff社、オンライン本人確認で世界展開

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自己検査アプリ「PocDoc」と提携し、検査の信頼性向上に貢献

新型コロナ禍により、世界中でオンラインサービスの利用が増加し続けており、ユーザーが身元をデジタルで証明し、サービス事業者が検証を迫られるような場面が増えている。ヘルスケア分野も例外ではなく、オンライン診療やリモート在宅検査では、個人情報の取り違えからの医療過誤リスクに加え、悪意のある❝なりすまし(身元詐欺)❞や検体のすり替えのような犯罪行為まで懸念されている。実際にアメリカ連邦取引委員会に報告された医療用ID盗難の事例は、2017 年の約 6,800 件から2021 年には約 43,000 件に急増しており、この傾向は世界的なものとなっている。

需要が高まるオンラインでの個人識別認証(ID Verification、IDV)、いわゆる本人確認手段を提供するのがエストニアの新興 Veriff社である。

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世界一と評される電子立国 エストニア。その首都タリンで2015年に創業したスタートアップ Veriff社 (Veriff Inc.)は、AIベースのオンラインID検証ソリューションを提供している。

パスポートや運転免許証に始まり、各国の公的文書を標本データベースとして備えたソリューションの中核をなす意思決定エンジンは、アプリ経由で取得した入力データや操作者の行動パターンから、個人の特徴的な数千のデータポイントを取得し、僅か6秒で真偽を判断。オンラインでの個人識別検証は、物理的な対面認証よりも正確であり、他のどの技術アプローチよりも多くの詐欺を防ぐことができる、とVeriff社は言う。

Veriff社は9月6日、スマホ基盤のポイントオブケア検査ソリューションを開発するCertific社との提携を発表した。Certific社 (Certific OÜ) は、Skype社の最初の従業員としても名高いTaavet Hinrikus氏が共同創業者を務める、2020年9月創業のスタートアップである (2011年にマイクロソフトに買収されたことで記憶が薄れがちだが、Skypeも元はエストニア発の企業である)。
遠隔で自己検査を安全に行うための知識とツールを患者に提供することで、Certific 社は疾病の早期診断を目指し、それをスケーラブルに展開することで患者の転帰を改善しようとしている。
Veriff社との提携は、Certific社の顧客にシンプルで迅速な身元確認プロセスを提供して、❝なりすまし❞などの詐欺行為リスクを軽減し、対面ではないことによる不安や個人情報関連リスクを解消し、遠隔検査における信頼関係を強化することを目的としている。

一方、Certific社は同じく9月6日、「PocDocプラットフォーム」を開発する、英国ケンブリッジ拠点の Vital Signs社 (Vital Signs Solutions Limited ) と提携し、臨床検査ラボと同等レベルの検査結果を在宅で得られる「PocDoc」脂質検査に、Veriff社の本人確認機能を追加し、家庭血圧計、BMI計算をパッケージ化した、心血管疾患リスクを早期に発見し心臓発作や脳卒中を予防するセルフ・テストキットを開発したと発表した。

(出典) Vital Signs

同検査のフロー概要は、以下の通り:
①検査キットが自宅に配送。
②専用アプリをダウンロード。写真入りの公的IDおよび自撮り写真を撮影。
③所定の問診票に回答。
④穿刺して血液を滴下。5分経過後、ステッカーを剥がすと、検査結果が表示。
⑤検査結果をアプリ経由で写真撮影。
⑥HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、中性脂肪、総コレステロールのようなバイオマーカーの検査結果および基準値がレポート表示。医療機関にも共有。


(出典) Certific社

写真照合②の段階で本人確認も実施されるが、加えて試験の過程も動画撮影が求められ、疑わしき行動パターンなどが機械学習でチェックされる仕組みである。

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Veriff社は2022年1月、Tiger Global社とAlkeon Capital社が主導するシリーズCラウンドで1億ドルの資金調達を実施した。評価額が15億ドルに達し、晴れてユニコーン(10億ドル以上の評価を受ける非公開企業)入りを果たし、グローバルな顧客ベースの構築に向けて、信頼し得るオンラインID検証基盤の提供の足場固めを進めている。

英語の他、アラビア語や中国語、韓国語、日本語まで、計46言語に対応しており、Node.js、JavaScript、Python、Curlに対応する等、多言語・多システムとの連携にも対応している。

オンライン・ファーストの選択肢が珍しくなくなったアフターコロナ時代に、オンラインでの本人確認を物理的な対面認証のように正確に実現するIDV(ID Verification)は、オンラインサービスの浸透をより一層強固なものにしてゆくに違いない。
 

(了)


本記事は以下の公式発表を翻訳要約し、適宜解説を加えたものである。


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