2019/08/13

米国eHealthジャーナル 第1号

American Well、Ciscoと提携

テレヘルス, Amwell (American Well), ジャーナル第01号

 
 

MAプランにおけるテレヘルス償還に照準を定める

リアルタイム・オンライン診療プラットフォーム企業の
American Wellは6月14日、ヘルスケアサービスのデリバリーを、病院やヘルスシステムから患者の自宅へとシフトさせる取り組みを拡大するため、ネットワーク機器大手のCisco Systemsと提携したと発表した。両社は、ヘルスケア・インフラおよびコラボレーション技術における専門性を持ち寄り、当初は、家庭のテレビにAmerican Wellのシステムを組み入れることで、テレヘルスという選択肢を米国の高齢者に届けることに注力する。

両社の提携は、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)によるテレヘルス償還の拡大計画の直後に発表された(詳細は「米国におけるテレヘルス利用状況」を参照)。CMSは4月5日、2020プラン年からメディケア・アドバンテージ(MA) プランの基本給付におけるテレヘルスへの償還を認め、患者の医療アクセス手段として新たな選択肢を追加した。CMSのSeema Verma局長は、基本給付の下でテレヘルス支払いを許可する今回の最終規定により、今後はより多くのMAプランがテレヘルスをカバーするようになると予想している。


American Wellの仕組み

American Well のプラットフォームは、HIPPA準拠のリアルタイム・ビデオ通話(あるいはリアルタイム・チャット)によって、患者がどこからでも医師の診察を受けることを可能にしている。患者はスマートフォンにダウンロードしたAmerican Wellのアプリ「Amwell」を使って、今すぐ診察が可能な医師、もしくは1週間後に予約できる医師を探すことができる。専門分野やその他の基準で医師をサーチし、プロフィール(専門分野、経歴、卒業校)を確認した上で任意の医師を選んで診察してもらう仕組みだ。処方箋医薬品が必要な場合には、医師は電子処方箋を薬局に送る。

なお、電子処方箋の利用は、リアルタイム・ビデオ通話による診察に限られ、チャットによる診療では処方箋医薬品を出すことができない。治療費は、American Wellと提携関係にある保険プランの加入者は、プラン規定の自己負担金を支払う。American Wellと提携関係にない保険に加入している場合、もしくは無保険者である場合には全額自己負担となるが、価格は69ドル~と、米国では「安価」といえる料金設定となっている。

年中無休、24時間オープンの「Amwell」によって、患者は通院の負担がなくなり、予約を取ってから診療を受けるまでの期間を短縮でき、来院時の待合室での待ち時間もなくなる。受診が容易かつ安価になれば、早期治療や予防医療が可能となり、また、重症化してから診察を受ける患者も少なくなると期待される。


医師が、「Amwell」で医療サービスを提供したい場合には、1)「Amwell」上で個人開業(private practice)するか、2)「Amwell」専属の「Online Care Group」とよばれる医師所有の診療グループに加わる。開業は無料で、カメラ機能付きのPCやiPad、iPhoneのいずれかさえあればよく、診療費も自由に設定することが可能だ。スケジュールも極めてフレキシブルで、「Amwell」上での開業を維持するためには、1週間に少なくとも2件のアポイント枠を設定しておけばよい。患者は治療費を前払いで支払うため、未回収のリスクもない*1
「Amwell」では、すべての参加医師に対して、ビデオベースのトレーニングや、マンツーマン・セッションの機会を提供している。

Online Care Groupでは、ポジションに空きがある場合に医師やその他専門家を募集しており、求人情報はAmerican Wellのウェブサイトで確認できる。Online Care Groupに参加する場合、支払いレートは専門分野によっても異なるが、診療1件ごとに定額を受け取る仕組みだ。Online Care Groupでも、医師は「いつ働くか」を自身で設定でき、自由度が高い。

なお、米国では医師免許は州政府の管轄とされ、州をまたいだ医療サービスの提供は基本的にはできないため、「Amwell」においても、参加医師が保有する免許が有効な州の居住者のみが、その医師の診察対象となる(医師免許の州間協定については、「統合的モバイルヘルスの実現へ」を参照)。

「Amwell」は、医者と患者の需要と供給をデジタルで効率よく結びつけるプラットフォームだ。患者には便利で安価な医療を、医師には新しい働き方を提供している。CMSのみならず、民間保険会社もテレヘルスの導入に積極性を見せており、今後の展開が期待される。

 

(了)


 *1) 
米国では、外来診療においても窓口で当日支払うことは稀。患者の自宅に請求書が後日送られる仕組みとなっている。


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