2021/05/13

米国eHealthジャーナル (無料)

糖尿病管理アルゴリズムのJanuary AI社、2100万ドル調達

デジタルセラピューティクス, VC投資・M&A・決算, テレヘルス, 糖尿病, 患者データ・疾病リスク分析, 疾病管理・患者モニタリング, AI技術

患者個人ごとに、食品による血糖値変化予測

※ 本記事は、「米国eHealthジャーナル」の番外版として無料公開しております。

健康を科学するマルチオミクス*¹のアプローチによって糖尿病患者を支援するJanuary AI社は、2月25日、新たに880万ドルを調達し、調達資金の総額が2,100万ドルに達したことを発表した。同社は、AI技術によって、糖尿病が個々の患者にどのように異なった影響を与えるかを見いだし、より健康な状態に移行するための具体的な提案を行っている。

米国では成人人口の半分にあたる1億2200万人が糖尿病または糖尿病予備軍であり、今後10年間でさらに10%以上の増加が見込まれている。糖尿病は米国で最も費用のかかる慢性疾患であり、米国の医療制度では医療費全体の1/7が糖尿病治療に費やされている。

January AI社は3年間の研究開発を経て、1,000人規模の臨床学研究から得られた持続血糖値モニター (CGM)の予測技術のアルゴリズムにより、個人個人の4日間の食品データを入力すれば、食品による血糖値の変化を正確に予測することが可能であったことを、2020年夏に行われた米国糖尿病協会の学術会議で発表した。また、血糖値を急上昇させる要因を予測し、より血糖値の上がりにくい食品を提案するとともに、血糖値を下げるために必要な正確な活動量を推奨することで、10日間で70%以上のプログラム参加者が、目標値の範囲内に血糖値を抑えることができた。

 出所:January AI社

他企業でも心拍数や血糖値などの生体センサーデータの解明は進んでいるが、January AI社は食事そのものの影響を分析・予測することで成果を上げている。人々が何を食べているかを理解することは、メタボリックヘルスや慢性疾患に対処するための鍵となる。同社は、地元のレストランのメニューを含む1,600万品目のフードアトラス (食物図譜) を集計し、機械学習を用いて、米国人が日常的に食べる食品の栄養表示やグリセミック・インデックス*²を作成し、食品を実用的なヘルスデータへと変換した。このデータを利用して、慢性疾患の予防と管理を支援し、さらには医療費を削減することが期待されている。

今回調達された資金は、製品開発やエンジニアリング、オペレーションの各分野に人材を確保し、同社のメタボリックヘルスプログラム「Season of Me」の登録を促進させるために使用される。「Season of Me」は、食事や運動、睡眠が血糖値にどのような影響を与えるかをリアルタイムに把握し、糖尿病患者がより健康的な生活を送るための習慣を身につけることをサポートする。

(了)


【脚注】

*1 マルチオミクス(Multi-omics)
人間の健康と病気を包括的に理解するには、分子の複雑さと、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなどの複数レベルでの変動を解釈する必要がある。シーケンシング技術の出現により、生物学はこれらのレベルで生成されたデータにますます依存するようになった。これらのデータをまとめて「マルチオミクス」データと呼ぶ。
「Multi-omics Data Integration, Interpretation, and Its Application」 US National Library of Medicine National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7003173/

*2 グリセミック・インデックス(glycemic index:GI)
血糖上昇という消化性炭水化物の生理機能の違いに着目して消化・吸収される炭水化物の質的評価を行うための指標。 「炭水化物」 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4h.pdf


本記事は以下の公式発表を翻訳要約し、適宜解説を加えたものである。


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