2023/04/11
米国eHealthジャーナル第85号
AIチャットボットのChatGPT、心血管疾患予防の基本コンセプトを理解
ジャーナル第85号, AI技術, 研究・調査, 循環器科/心疾患
ジェネレーティブAIが医療分野で果たす役割
OpenAIが開発した人工知能(AI)基盤のチャットボット「ChatGPT」が心血管疾患の予防に関する質問に対して「概ねにおいて適切な」回答をしたことを示す研究「Appropriateness of Cardiovascular Disease Prevention Recommendations Obtained From a Popular Online Chat-Based Artificial Intelligence Model」が、2月3日付で米国医師会雑誌(JAMA)オンライン版に2月3日付で掲載された。
臨床と医療ケアを統合させた高名な非営利医療機関であるCleveland Clinic(オハイオ州クリーブランド)の心血管疾患専門医を中心とする研究班は、心血管疾患予防のための基本的なコンセプトについて25件の質問をまとめ、その質問をChatGPTに3回投げかけて、各回答を臨床医が「採点」した。
ChatGPTの回答に対する採点は、「適切」、「不適切」、また回答にばらつきがある場合には「信頼性が低い」の3種類のいずれかで評価した。採点者である臨床医は、2つの異なる状況シナリオ下でChatGPTの回答を評価した。1つは患者直面型プラットフォームにおける回答、もう1つは患者向けメッセージのドラフトとして生成され、ドラフトを確認するために臨床医に送付される前の回答が想定された。その結果、25の質問のうち21問に対する回答がどちらの状況シナリオ下でも適切であると評価された一方、4問に対する回答はどちらのシナリオでも不適切であると評価された。
研究班は、ChatGPTが医療用に設計されたAIではないこと、また心血管疾患の予防コンセプトを25件の質問のみで網羅することは不可能であることなど、この研究の限界を指摘した上で、「今回得られた知見は、対話型AIが、心血管疾患予防についての一般的な質問に関する患者教育および患者と医師間のコミュニケーションを補強することにより、臨床ワークフローを支援できる可能性を示唆している」と述べた。例えば、このようなアプリケーションは、情報プラットフォーム上の簡単な問い合わせに会話形式で自動回答したり、患者から医師への電子メッセージに対する返信ドラフトを自動作成したりすることができる。
2022年11月にリリースされたばかりのChatGPTは、ジェネレーティブAI(生成系AI)とよばれる次世代のAIである。ジェネレーティブAIとは、コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ実用的な、そして、まったく新規のオリジナルのアウトプットを生成する新規の機械学習手法。ChatGPTは、質問に対して驚くほど正確な解答を提供するだけでなく、詩を書いたり、与えられたあらゆるトピックに対応することが可能で、そのデビューは技術産業界に大きな衝撃を与え、瞬く間に世界的な現象となった。そして、AIブームの次の波に乗ろうとする投資家たちの熱狂に火をつけ、以来、ウォール街はChatGPTに「夢中」である。
2019年にOpenAIに初期投資を行ったMicrosoftは2023年1月、OpenAI に100億ドルの追加投資を行うことで合意し、2月7日にはOpenAIの自然言語機能を取り入れたBing検索エンジンの新バージョンを発表した。このBing新バージョンは、ライバルであるGoogleの親会社、Alphabetにとっては市場を揺るがすほど大きな影響となるものだ。Bingの新バージョンが利用できるのは限られた数のユーザーのみで、各ユーザーは限られた数のクエリ実行が可能だという。これらのユーザーは、フルバージョンのサービスへのアクセスのウェイティングリストに加わることが可能だ。Microsoftは2月の終わりまでにさらに100万人にアクセスを拡大することを計画している。
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