2023/04/13
デジタルテクノロジーによって進化する歯科治療(第13回)
NTTデータ経営研究所に聞く「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」【中編】
テレヘルス, 診断・検査・予測, 歯科・口腔外科, 日本, AI技術, 臨床医
歯科オンライン診療・医科歯科連携で求められるテクノロジーとは
「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」は、医科でオンライン診療が発展するなか、歯科分野での今後の取り組みを検討する事業です。厚生労働省から株式会社NTTデータ経営研究所(以下、NTTデータ経営研究所)が受託して実施されました。歯科がない病院や介護施設等で歯科医師や歯科衛生士がICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)を活用し、口腔衛生の管理や指導や診療を行い、医科歯科連携を実現する可能性について調べています。
たとえば、操作の難しい口腔内カメラではなくスマートフォンのカメラを用いた歯科医師による遠隔確認を行いました。また、多職種で食事場面をオンラインで観察して機能を評価する、ミールラウンドでの応用を検証しています。この結果、歯科衛生士が口腔内カメラの映像を確認し、訪問診療で知り合っている介護職員に具体的なケアの指導を行うことで、口腔衛生状態の改善がみられる報告がありました。1)
ほかには、歯科医師の指示が理解可能かという点で、ICTを活用した歯科診療には認知症の進行度合いが影響することがわかりました。オンラインによるミールラウンドでは直接対面しないため患者(利用者)がリラックスできるメリットがあります。一方で個人情報や同意、セキュリティの問題があげられました。
令和2年度、歯科専門職ではないスタッフには、口腔内の部位の専門的な呼び方や診察に必要な撮影が難しいという声がありました。そこで令和3年度事業では、参加者のため遠隔確認にあたっての留意事項の手引書を作成しています。
前編に続き、NTTデータ経営研究所ライフバリュークリエイションユニットのアソシエイトパートナーの朝長 大氏とマネージャーの塙 由布子氏にお話を伺いました。
Q3. 検証事業を通して、どのような発見や課題があったでしょうか。
塙氏:ICTを活用した診療は、対面診療とも比較して検証すべきと指摘されています。今後は複数の実証フィールド(臨床現場)で症例数を重ね、使用する機器の開発も含めた検証を考えています。特にICTを活用した歯科診療では、遠隔の歯科専門職が必要な際、口腔内をきちんと見られる機器の開発や条件の検討もいるでしょう。また、医科歯科連携をより推進するためには、歯科専門職側が主導することも重要です。歯科専門職側が積極的に運用ルールを策定し、研修会を開催することを提案します。
Q4. 「医科歯科連携」というテーマについてコンサルティングのお立場からどう見ておられますか。
塙氏:歯科専門職の介入による口腔管理の推進や、介護職員と地域の歯科専門職が連携することで地域包括ケアシステムの構築の一助となります。連携により疾患の早期発見・重症化予防等につながることが期待されるでしょう。
医科や介護関係者に歯科について理解を深めてもらいながら推進していくべきと考えています。医科を始めとする他(多)職種と歯科の連携、情報共有の必要性を現場でも感じているものの、そのような取り組みが普及していない現状です。医科や介護関係者に、歯科が介入することで患者や利用者の予後に影響があることを広く知ってもらうことが求められています。医師は歯科が何を診療できて、どんなことができるのかがわかりません。歯科ができることやどのようなタイミングで紹介をすればよいのかについて理解を深めてもらうような活動が必要でしょう。
Q5. 全体統括のお立場でこの事業の意義をどうお考えですか。
朝長氏:地域住民にとって安心安全な地域医療を提供するためには、多職種連携が必須であると考えています。もともと弊社は、平成20年頃より地域医療提供体制を充実させるための事業を行ってきました。主に医科における遠隔医療や地域医療連携に関する調査研究やコンサルティングを実施しています。
歯科領域におけるICTを活用した診療等を適切に活用できれば今後、歯科医師の診察が必要な場合も提供できる歯科医療の可能性が広がるでしょう。これにより地域差の是正にもつながると考えられます。
Q6. 「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」を通して、歯科ICTに関してどのような展望、見解をお持ちですか。
(次ページへ)
本記事に掲載されている情報は、一般に公開されている情報をもとに各執筆者が作成したものです。これらの情報に基づいてなされた判断により生じたいかなる損害・不利益についても、当社は一切の責任を負いません。記事、写真、図表などの無断転載を禁じます。
Copyright © 2023 LSMIP事務局 / CM Plus Corporation
連載記事