2023/06/13
米国eHealthジャーナル第89号
電子医療情報交換、全米普及に遅れ
GAOが州政府や医療関係組織を調査
米政府監査院(GAO)は4月21日、電子医療情報交換(Electronic Health Information Exchange、以下HIE)の普及は不十分で、改善の余地があると報告した。HIEとは、医療記録など個人の健康関連情報を医療従事者間や医療従事者と患者の間で電子的に交換する機能を指す。
2009年2月に制定された連邦法、「HITECH(Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act)」に基づき、連邦政府は2021年までの期間中、メディケイド・プログラムにおいてHIEを促進する州政府の特定の取り組みに24億ドルの資金(以下、HITECH資金)を提供し、これを支援した。メディケイドは主に貧困層を対象とする連邦保険プログラムで、運営は各州政府が行っている。
GAOは今回、①州政府はHITECH資金をどのように使用したか、またHITECH資金に代替する資金を用意する計画があるか、②HITECH法成立以降、HIEの利用がどの程度変化したか、③HIEをとりまく課題に対処するための連邦政府の取り組みはどうだったか、のそれぞれについて、HITECH資金を管理した連邦政府機関やHITECH資金を利用した州政府機関、病院や医師の調査データを分析するとともに、関係者に対する聞き取り調査を実施した。
その結果、HITECH資金にアクセスした7州のうち5州では、HIEを導入・利用する組織にHITECH資金の一部または全部を分配していた。また、これらの州ではHITECH資金から支援を受けて導入されたHIEを維持する目的で、医療機関やペイヤーからのHIE利用料の徴収や、他の助成金や寄付などの獲得を模索していた。
病院や医師らの間でのHIE利用は増加したが、2021年時点において小規模病院や地方の病院におけるHIEの利用率は、その他病院よりも低かった。聞き取り調査からは、小規模病院や地方の病院の場合、HIEの導入や維持に必要な資金や技術的リソースが不足しがちであることが明らかになった。
連邦政府による取り組みについては、例えば保健福祉省(HHS)傘下のONC(Office of the National Coordinator for Health IT))が策定した健康情報交換を促進するための共通原則「TEFCA:Trusted Exchange Framework and Common Agreement」に基づき、医療機関同士を接続するシンプルなアプローチを採用することで、医療機関の費用負担を軽減できると考えられている。しかし、聞き取り調査では、TEFCAに基づく取り組みは、ITスタッフの不足やブロードバンドアクセスへの障壁といった、小規模病院や地方の病院にとって特に難しい課題の解決にはつながらないことが指摘された。
(了)
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