2019/06/25

米国eHealthジャーナル試読版

CMS、遠隔患者モニタリング規定を修正

疾病管理・患者モニタリング, 医療機器, 行政・規制ニュース

「incident to」請求が可能に

メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は3月14日、メディケアにおける遠隔患者モニタリング(Remote Patient Monitoring、RPM)規定を変更し、「incident to」請求を認めると発表した。これはデジタルヘルスを大きく推進する契機となる。以下にこれまでの経緯と、デジタルヘルス分野における同規定の意義を解説する。

CMSは2018年7月、2019年の「Physician Fee Schedule(PFS)*1」の変更案を発表し、RPMをメディケア償還の対象とする考えを明らかにした。その後同年11月に同規定は最終化され、新規定に基づく医師への支払いが2019年1月1日からスタートした。具体的には、デジタルヘルスを活用して医師が患者に提供する4種類のサービスについて新たにコードを割り当て、個別のサービスアイテムとしてメディケアに償還請求を行えるようにした(表参照)。

このうち3種類のサービスは、RPMである。新たに設定されたコードはいずれも医師にとっては収入を増やす機会となるものだ。デジタルアシスタント、スマートピル・ボトル、アプリを組み合わせた服薬遵守支援プログラムを提供するPillsyは2018年12月に、PFSの新規定によりプライマリーケア医は年間で40万ドル超の増収を見込むことも可能だと述べている。

コード 提供するサービスの内容 支払いレート
HCPCS G2010 デジタルヘルス・アプリを使って患者が収集し、医師に遠隔提出した映像や画像から、対面での診察や医療サービスが必要かどうかを判断し、電話、テキストEメールなどで24時間以内にフォローアップ・コミュニケーションを行う 1回13ドル
(何度も可能)
CPT99453 生理学的パラメーター(体重、血圧、呼吸流量、パルスオキシメトリ)モニタリングデバイスの初期セットアップと患者教育 1回21ドル
(初回のみ)
CPT99454 生理学的パラメーター・モニタリングデバイスの30日間の供給 月あたり69ドル
CPT99457*2 データ解釈と月あたり20分以上の双方向性コミュニケーション 月あたり54ドル

医師コミュニティはPFSにおける変更を歓迎したが、新コード、CPT99457が対象とするサービスについては、「professional time」に該当するものとして、CMSは当初「incident to」請求を認めないと述べ、これが議論の対象となっていた。

「incident to」請求とは、医師の監督の下で、アシスタントや看護師が提供した医療サービスについてメディケア請求を行うもので、支払いレートは医師が同一サービスを提供した場合と同じ額が支払われる。「incident to」請求が認められない場合においては、アシスタントや看護師など医師以外が提供したサービスの支払いレートは、医師が同一サービスを提供した場合の85%に減額される。

14日に発表された「incident to」請求における変更は、即日実効化された。米国では疾病管理アプリの導入が進んでおり、そういったアプリを開発する企業は、一般消費者からのマネタイズではなく、保険償還の対象となることを目指している。つまり、米国のデジタルヘルスケア市場は「B to B」が主流であり、エンドユーザーが一般の個人や患者の場合においても「B to B to C」という形が取られている。疾病管理アプリの開発企業これまで、主にペイヤーに訴求していたが、RPMの導入によって医師コミュニティにおける関心も高まっており、医師を対象とした販促という新たな経路が開かれつつある。

(了)


*1) メディケア・パートBの支払いモデルで毎年更新される
*2) 看護婦やアシスタント、クリニック・スタッフの権限を定める各州の法律にもよるが、RPMサービスは医師以外でも提供することが可能


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