2019/11/26

米国eHealthジャーナル 第8号

Ancestry、遺伝子リスクを検出する新規の遺伝子検査キット発売へ

ジャーナル第08号, 患者データ・疾病リスク分析, Ancestry

医師発注型の遺伝子検査

消費者直販(Direct to Consumer、DTC)の遺伝子検査キット、「AncestryDNA」の販売を手掛けるAncestryは10月15日、BRCA遺伝子変異を含む、疾病に関連する17種類の遺伝子リスクを検出する2種類の新しい遺伝子検査キット、「AncestryHealth Core」と「AncestryHealth Plus」を販売すると発表した。Ancestryは設立36年のDTC遺伝子検査キット大手。同社によると、2種類の遺伝子検査キットは、「AncestryDNA」とは異なり消費者が直接購入することはできず、ニューヨーク州ニューヨーク拠点のPWNHealthに所属する医師によって発注される必要がある。PWNHealthは、医師および遺伝カウンセラーの全米ネットワーク。

(出典)AncestryHealth®

様々な項目をカバーする日本のDTC遺伝子検査とは異なり、米国ではこれまで、祖先のルーツを探る検査が主流だった。そういった遺伝子検査キットは、基本的には母親のハプログループ(ミトコンドリア・ハプログループ)と父親のハプログループ(Y染色体ハプログループ)の情報を提供しているのみで、検査の価格は100 ドル前後である。祖先のルーツに関する関心が高いのは米国が移民国家であるためだ。 ヨーロッパ、アフリカ、アジアなどのさまざまな人種から成り立っていて、混血もかなり多い。しかし、戸籍制度がないために先祖を知ることが難しく、曾祖父母より以前の世代になると、どこから来たのか、どんな人と結婚したのかなど、わからない場合が多い。

Ancestry、23andMe、MyHeritageDNA、Family Tree DNA、Living DNAのDTC遺伝子検査キット大手5社のうちでは、23andMeがいち早く疾病関連の遺伝子リスクを検出するDTCテストを手掛け、その後MyHeritageが2019年5月に、BRCA遺伝子変異を含む11種類の疾病の遺伝子リスクを検出する新しいDTC遺伝子検査キット「MyHeritage DNA Health+Ancestry」を販売すると発表した(ジャーナル試読版 第3号(2019年06月23日発行)記事「MyHeritage、新規DTC遺伝子検査キットを発売」を参照)

DTCではなく、医師発注型の疾病関連リスク検出遺伝子検査を提供する企業としては、Color Genomics(以下、Color)やMyriad Geneticsがある。Colorは、2018年5月に正式に発足した国立衛生研究所(NIH)の「All of Us Research Program」において、遺伝カウンセリングとそのための技術インフラ提供を担当する組織に選出されている(ジャーナル 第5号(2019年10月08日発行)記事「NIH、All of Usの遺伝カウンセリング提供企業を選出」を参照)

Ancestryが新たに提供するAncestryHealth Coreは、疾病関連の遺伝子リスク情報のほか、ウェルネス、栄養、代謝に関連する遺伝子データを提供する。価格は149ドルだが、AncestryDNAの既存ユーザーは49ドルで購入できる。もう1つのAncestryHealth Plusは、当初はCore と同様の17種類の遺伝子にフォーカスするが、科学の進歩に伴ってより広範な遺伝子データを提供する計画だ。Plusでは次世代解析技術を利用する。価格は199ドルで、四半期ごとにデータ更新サービスが受けられる。最初の2四半期分のデータ更新は、初期費用の199ドルに含まれるが、その後は6か月ごとに49ドルのサブスクリプション・フィーを支払うこととなる。ユーザーは、検査結果の理解を助けるオンライン・リソースや遺伝カウンセラーにアクセスすることが可能だ。

なおAncestryの2種類の遺伝子検査キットはLDT(Laboratory Developed Test)と呼ばれる体外診断テストに該当し、FDAの規制対象外となっている。LDTは、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の管轄とされ、「CLIA認可ラボ」に登録されたラボであれば、FDAの承認なしでLDTの商業化が可能だ(ジャーナル試読版 第2号(2019年07月09日発行)記事「DTC診断テスト企業のLetsGetChecked、3,000万ドルを調達」を参照)

(了)


本誌掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2019 LSMIP事務局 / CM Plus Singapore Pte. Ltd.

連載記事

執筆者について

関連記事