2022/03/29
医学博士が解説するリハビリテーションとデジタル技術(第2回)
ニューロリハビリテーションの現場からみる『EsoGLOVE™』への期待(後編)
EsoGLOVE™の機能とその有効性
EsoGLOVE™(イーエスオーグローブ)の機能
EsoGLOVE™は、脳卒中患者などの神経障害に苦しむ人々のために、手の運動機能回復補助を目的とした、Exoskelton(外骨格)型ソフトロボティックグローブです。このデバイスが既存の製品と比較して特に優れていると感じる機能について、以下に解説します。
1.豊富な運動モード
現在のEsoGLOVE™ systemは、9つの他動運動モードと8つのアクティブアシスティブ(自動介助)運動モードが搭載されており、患者個人の能力に合わせた設定が可能です。
他動運動とは、自発的な運動ができない人に対して、療法士が患者の身体の中で動かしていない部分を動かす、関節可動域訓練のひとつです。1) EsoGLOVE™の他動運動モードによって、全く指を動かすことができない患者の指の曲げ伸ばしをサポートします。一方、アクティブアシスティブ運動とは、わずかな補助で筋肉を動かせる人や、関節は動くものの動かすときに痛みを感じる人に適する訓練であり、患者は身体を自分で動かしますが、療法士が手やバンドなどの機具を使って補助します。1) EsoGLOVE™のアクティブアシスティブモードによって、部分的に指を動かすことが可能な患者をアシストします。重度の弛緩性麻痺であれば他動的に筋収縮を促し、随意収縮が可能になった段階では、アクティブアシスティブ運動にて、より巧緻性の高い動作練習が可能になると考えられます。つまり、運動麻痺の重症度に合わせて、機能を使いわけることが可能です。
2.バイオフィードバック機能
EsoGLOVE™は単に指を動かすことをサポートするのではなく、PCと接続することで運動モードと連動した映像を見ることができます。このような運動と視覚効果を同期させる機能(バイオフィードバック機能)は、より神経の可塑性を刺激し、運動麻痺の回復効果を高めるとされています。また、麻痺肢の運動時に視覚刺激が入力されることにより、学習性不使用(learned-nonuse)を予防し、脳の活性化が高めることが期待されます。
3.優れた装着性とポータビリティー
手袋型のEsoGLOVE™は装着性に優れているため、前編で紹介した課題指向型トレーニングに適しています。重量は、コントロールボックスが2.5㎏、グローブは150~180gと軽量であり、機能的なタスクトレーニングを可能にし、快適性に優れています。また、持ち運びに便利であるため、病棟やベッドサイド、さらに家庭での使用も可能です。超急性期のベッドサイドリハの段階から、廃用性筋萎縮の予防や、感覚刺激入力を目的とした介入が可能なうえ、日常的に継続的なケアが提供できると考えられます。
EsoGLOVE™により脳に機能的変化をもたらす
また、EsoGLOVE™によって運動麻痺が改善すると考えられる、科学的根拠があります。Dr. Fatima Nasrallahらによる研究において、脳卒中により手に運動麻痺をもつ9人の被験者(発症後24.3±17.1ヵ月)を対象に、EsoGLOVE™を用いた他動運動の後に、両手で指の曲げ伸ばし課題をおこなうと、運動を司る脳領域である補足運動野(SMA)や一次運動野(S1)の活動が有意に向上したことが、論文で報告されています。2)
今後さらに、発症早期の症例を対象とした研究や、ランダム化比較試験がおこなわれることにより、EsoGLOVE™の有効性を示すエビデンスが積み重ねられると考えられます。そして、臨床的に検証された医療用ロボットのEsoGLOVE™の導入が進み、リハビリテーションの新たなスタンダードとして確立していくことを期待します。
(了)
【出典】
この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。
【Roceso Technologies】
Roceso Technologiesは、ソフトロボット外骨格技術の世界的パイオニアであり、神経系技術のリーダーである。同社のソフトロボットによるソリューションは、リハビリテーションや日常生活において、四肢の運動機能に障害を持つ患者に機能的な支援を提供している。同社の主力製品EsoGLOVE™は、最高の機能性と快適性を提供する世界最軽量のハンドリハビリテーションおよび外骨格デバイスの1つ。ハンドリハビリテーションシステムEsoGLOVE™はFDAに登録され、EU(CE)、シンガポール(HAS)、日本(FDA)、韓国(FDA)、マレーシア(MDA)、オーストラリア(TGA)で承認されている。 また、EsoGLOVE™の他にも、リハビリテーション評価技術、ゲーミフィケーション技術、プラットフォーム技術を提供。世界中に臨床パートナーを持ち、10カ国以上に販売網を持つ。日本では、インターリハ株式会社(https://www.irc-web.co.jp/)がディストリビューションパートナーとなっている。
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