2022/08/04

臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術 (第21回)

データで“調子”をよくする時代へ、テックドクター【後編】

患者データ・疾病リスク分析, ウェアラブル, 日本, 診断・検査・予測, 臨床医, デジタルセラピューティクス

テックドクターが直面する課題と描く未来

 

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(出所:Shutterstock)

ウェアラブルデバイスやオンラインアンケートを用いたメンタルヘルスサポート「SelfDoc.」と、ウェアラブルデバイスからのロングタームデータ、ePROや各種医療データを保存し簡便に解析ができるデータ解析基盤「SelfBase」を展開している、株式会社テックドクター(以下、テックドクター)。 今回取材させていただき、テックドクターの技術で他社にない特徴として着目した点は、汎用的なウェアラブルデバイスや医療機器の検証を行い、また長期に渡るデータの価値を活かすための解析アルゴリズムと解析手法の開発です。これによって、ウルトラロングターム(超長期)の被験者の心拍や運動・睡眠データ取得、また実臨床への応用を可能とします。

ウェアラブルデバイスのデータは大量かつ長期にわたり、解析手法が複雑になりやすい、解析のための前処理に苦慮しているという課題があります。テックドクターではこれまで培った解析技術や手法を取り入れることで、これを解決し、解析工数と解析コストの70%カットを実現。現在、データ解析基盤「SelfBase」は、大手製薬企業6社を中心に治験等において定常的に利用が始まっているとのことです。

また、テックドクターは今年6月に、シリーズAラウンドで5億円の調達を行ったことを発表。7月には、資生堂研究所「fibona(フィボナ)」のデータ解析・ソリューション開発事業者として参画することを発表するなど、急成長を遂げているスタートアップです。テックドクターの代表取締役、湊和修氏へインタビューを行いましたので、その内容を以下にご紹介いたします。

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テックドクター代表取締役、湊和修氏(出所:テックドクター)

Q1. 御社のサービス展開のきっかけはどのようなことでしょうか?
湊氏: 慶應義塾大学医学部の精神科(精神・神経科学教室)における「AMED IoT等活用行動変容研究事業」に採択された研究である、「現場の負担を抑えたセンシングでストレスや幸福度を定量し 健康経営オフィスを実現するシステムの開発」*¹ 研究がチームのきっかけとなりました。本研究においてウェアラブルデバイスで取得できる心拍データの精度を確認するとともに、変化を捉えることができる非常に重要なデータを確認しました。

創業者の周りにも精神疾患関連で周囲を巻き込む課題を強く感じていたこともあり、多くの疾患のアンメットニーズを解決できる可能性を感じました。ただ、専用の解析システムがないために、研究におけるデータ収集から解析に非常に時間と手間がかかっているという課題を感じ、解決していきたいと考えました。

長期的にはDTx開発ニーズが高まる中で、データの解析にさらに多くの課題が生まれると考え、チームにおけるデータ解析やシステム構築の強みを生かしてウェアラブルデバイスを中心としたシステム提供及び、メンタルヘルス領域におけるソリューション開発を進めてまいりました。

Q2.  開発で苦労した点はありますか?
湊氏: まだまだ、医療機器ではないIoT関連機器やウェアラブルのデータを先行研究と照らし合わせて、信頼にたりうる精度を担保したり、信頼できない基準を整理したりしました。また、デバイスごとのデータ精度比較の検証など、社内の実証実験を根気強く徹底的に進めてきた点にチームの努力が必要でした。

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湊氏およびテックドクターメンバー(出所:テックドクター)

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