2022/11/08
米国eHealthジャーナル第76号
Mayo ClinicとEHRデータ企業のnferenceが既存提携を拡大
言語技術, ジャーナル第76号, nference, AI技術, 患者データ・疾病リスク分析, Mayo Clinic, 提携
リアルワールド・エビデンス(RWE)生成プラットフォームを構築
非営利アカデミック医療センターのMayo Clinicは9月21日、電子医療記録(EHR)データ企業、nferenceとの既存提携を拡大し、リアルワールド・エビデンス(RWE)生成プラットフォームを構築すると発表した。
nferenceは医療機関と提携することで、EHRデータを強力な人工知能(AI)基盤のソフトウェアソリューションへと変容させることに特化している。EHRには数十年にわたる豊富な患者データが含まれるが、それらは主に非構造化データで構成されている。EHRからRWEを生成できれば、科学者はRWEを用いて、患者のために次世代の個別化診断および治療法を発見・開発する取り組みを加速できる。
nference が開発した、nSightsと呼ばれるRWE生成プラットフォームは、臨床記録、放射線検査結果、臨床検査結果、心電図データなどを含む、匿名化された患者データを収集してRWEを生成するもの。nferenceでは、ゆくゆくはゲノムデータやデジタルパソロジーも収集する計画だという。デジタルパソロジーとは、病理ガラススライドをデジタルスライド化し、モニター上に表示して病理標本を観察する手法。デジタルパソロジーの利用により、病理画像の管理や保存が容易になるほか、高解像度での画像表示やAIによる画像解析が可能になる。Nferenceによると、製薬企業やバイオテク企業はnSightsから得られたRWEを、治療法や診断法の開発に役立てることが可能だ。
Mayo Clinicとnferenceはすでに12年間の戦略的提携契約を締結している。今回の提携拡大により、nferenceの顧客や提携企業は、さまざまな疾患や治療領域にわたる「Mayo Clinic Platform」の大規模な匿名化EHR基盤データにアクセスすることが可能となる。また、合意の下nferenceは、「Mayo Clinic Platform_Discover」と呼ばれる、nSightsプラットフォームのMayo Clinicブランド版を構築する。
nferenceは2020年1月のシリーズB投資ラウンドで6,000万ドルを調達している。その直後にMayo Clinicは、創薬プロセスの加速を目的とした同組織のプラットフォーム・イニシアチブである「Clinical Data Analytics Platform」の最初のパートナー企業としてnferenceを選出した。また、Mayo Clinic傘下のMayo Clinic Ventures は、2020年12月に完了したnferenceの6,000万ドルのシリーズC投資ラウンドに参加している。両組織は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン研究でも協力し、また、デジタルパソロジーや心拍診断の分野にも提携関係を拡大した。2021年4月には、nferenceのAI機能とMayo Clinicの医療データを使って、心臓病の検出をはじめとするデジタルセンサー診断の構築を目的として、合弁会社のAnumanaを設立している。
Anumanaは5月、肺高血圧症の早期発見を目的とした心電図(ECG)ベースのAIアルゴリズムについてFDAから画期的医療機器指定を取得した。同社は7月には、「隠れた心血管疾患」を検出するためのAI基盤ECGアルゴリズムの開発と提供を目的として、スイスの製薬大手Novartisと提携したことを明らかにしている。Novartisとの提携でAnumanaは、Mayo Clinicの専門家と協力し、心不全の前兆である左心室機能障害または心臓ポンプ機能低下の兆候、また動脈壁の肥厚化により心臓発作や脳梗塞リスクをもたらすアテローム性動脈硬化症について、ECGデータを分析して検知できるようAIを訓練する。さらに、回避可能な入院や心血管死リスクの低減を目的に、エビデンスに基づくデジタル・ポイントオブケア・ソリューションを開発するという。
出典:Anumana
(了)
本記事掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2022 株式会社シーエムプラス LSMIP編集部
連載記事