2022/11/08
米国eHealthジャーナル第76号
FDA、DyAnsysのPrimary Reliefを承認
医療機器, 行政・規制ニュース, DyAnsys, 疼痛管理, ジャーナル第76号
オピオイド使用量の減少を目的としたウェアラブル耳介神経刺激装置
自律神経系に特化したカリフォルニア州パルアルト拠点の医療機器企業、DyAnsysは9月22日、同社の経皮的電気神経刺激装置(PENS)システムである「Primary Relief」が心臓手術後の術後疼痛治療を適応としてFDAの承認を受けたと発表した。DyAnsysは患者のオピオイド使用量の減少を目的とした医療機器の開発に注力しており、今回の承認はDyAnsysが取得した15番目の510(k)承認となる。 Primary Reliefは、帝王切開後の術後疼痛治療のための使用についてもFDAの承認を受けている。
バッテリー駆動型のウェアラブル耳介神経刺激装置であるPrimary Reliefは、起動から72時間に渡って、定期的に低レベルの電気パルスを脳神経につながる耳介枝に送達するよう設計されている。
心臓手術後の患者におけるPrimary Reliefの有効性は、60名の被験者を対象とした単一施設無作為化二重盲検プラセボ比較対照試験で実証された。臨床試験ではプラセボ群と比較してPrimary Relief群で痛みのスコアが低下し、術後の鎮痛剤の必要性が軽減されたことが示唆された。Primary Relief群の術後フェンタニル使用量は、プラセボ群の3分の1だった。DyAnsysによると、Primary Reliefは心臓手術後の術後疼痛の対症療法として最大3日間使用できる。
DyAnsysのCEOであるSrini Nageshwar氏は、「この画期的なデバイスは、麻薬系鎮痛剤を使用せずに痛みを大幅に軽減することができる。術後のオピオイドの使用を減らす、あるいは避けることで、オピオイド中毒のリスクを減らすことが可能だ」と声明で述べた。
オピオイドの使用は米国、そして世界で大きな問題になっている。公衆衛生の向上を掲げる連邦機関の米国疾病対策予防センター(CDC)によると、2017年だけでも米国で7万名以上がオピオイド過剰摂取で死亡した。2018年10月には、米国で深刻な社会問題になっているオピオイド中毒の蔓延に歯止めをかけることを目的とする「Substance Use-Disorder Prevention that Promotes Opioid Recovery and Treatment for Patients and Communities Act」が近年ではめずらしく超党派合意により成立。向こう5年間に渡り、16床以上の中毒治療施設における入院ケアへの連邦支出制限の一部撤廃や、メディケイドおよびメディケアにおける物質使用障害(SUD)治療を目的としたテレヘルス利用の拡大などが定められた。しかしながら、官民での取り組みが行われているものの、オピオイド危機は依然として収束していない。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以前の2019年には、12歳以上の推定1,010万人が過去1年以内にオピオイドを誤用しており、2020年の薬物過剰摂取による死亡の約75%はオピオイドによるものだった。 2021年の米国における薬物過剰摂取による死亡者数は推定10万7,622人で、2020年の推定9万3,655人から15%近く増加した。重度の痛みを抱える患者において特に痛みのスコアを減少させたPrimary Reliefはオピオイド危機問題解決の一助となる可能性がある。
DyAnsysは、糖尿病性神経因性疼痛を適応症としてFDA承認を受けたウェアラブル耳介神経刺激装置「First Relief」と、オピオイド離脱の補助を適応としてFDA承認を受けたウェアラブル耳介神経刺激装置の「Drug Relief」いう2つのPENSデバイスも提供している。
(了)
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