2019/08/27

米国eHealthジャーナル 第2号

Belong.Life、シリーズB投資ラウンドで1,400万ドルを調達

Belong.Life, ジャーナル第02号, 疾病管理・患者モニタリング, VC投資・M&A・決算

 


世界最大の癌患者向けソーシャルネットワーク

癌患者のためのソーシャルネットワーク/ナビゲーション・アプリ「Belong」を開発するBelong.Lifeは7月1日、IQVIAが主導するシリーズB投資ラウンドで1,400万ドルを調達したことを明らかにした。Belong.Lifeによると、同投資ラウンドにはThe Group Venturesや既存投資家らも参加した。スマートフォン用アプリのBelongは、AppleのApp StoreもしくはGoogle Playからダウンロードが可能で、癌患者とその家族は、他の癌患者やその介護者とつながったり、彼らを支援することができる。アプリには、癌専門医や放射線医、看護師に質問できるチャット機能や、臨床試験マッチングサービス、ファイル保存機能などもついている。
 

(出典)Belong.Life


Belongは、癌患者のための世界最大のソーシャルシャルネットワークであると同時に、医師やペイヤー(保険者)向けの患者エンゲージメント・プラットフォームである。「エンゲージメント」はマーケティング用語で、ユーザがどの程度積極的に関与し行動するか、つまり、サービスや企業に対する繋がりや愛着を強さの度合いを意味する。医療においては、患者自身が自ら学習・参加することで治療にどれだけ積極的に関与するかを表し、患者中心の医療サービスおける重要な要素となっている。

Belongは、個別化された治療ナビゲーション・プラットフォームでもあり、患者の癌の種類やステージ、加入する保険、治療を担当する医師に合わせて個別化されたクリニカルパスやコンテンツが表示される。これは、「Provider Engagement Zone」と呼ばれるBelongのエコシステムの1つによって可能となっている。Provider Engagement Zoneは、まさに、患者の治療を担当する医師によるエンゲージメントで、患者のために医師が収集、整理、要約したカスタムメイドのデータ群であり、患者は、特定のプロバイダーアクセスコードを入力することで、Provider Engagement Zoneにアクセスすることが出来る。

Belong.Lifeは、人員不足、作業負荷、不必要な救急医療(ER)、外来対応の限界といった、医療機関が抱える問題を解決するとともに、患者のアドヒアランス、生活の質、満足度を改善し、医療機関のブランディングを支援するソリューションの開発を目指した。アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること。

Provider Engagement Zoneには、アドバイスやリマインダー機能、教育的なコンテンツを含むナビゲーション・テンプレートが含まれ、医師は、個別化されたアラートやメッセージを必要に応じて患者に送ることが出来る。また、患者-医師ディスカッション・グループでは、「癌専門看護師」や「臨床試験」、「患者ナビゲーション」といったトピックがカバーされ、それぞれについて設置されたQ&Aコーナーは、医療機関の時間と手間を省き、コストを削減する。さらに患者報告アウトカム指標(Patient-reported outcome measures、PROM)をカスタマイズし、フレキシブルに実行してデータを収集することも容易だ。ビッグデータ分析と機械学習に基づく、予測・予防ツールも提供しており、患者に有用なサービスの提供を可能にするとともにER利用や再入院を削減するという。

Belong.Lifeによると、Belongは対面診療件数を20%、事務上の手続きに関する問い合わせを70%削減し、医療機関のブランディングにも大きく寄与している。医療機関による「Provider Engagement Zone」の採用は、BelongのSuccess Managerの支援を得ながら数週間で完了するという。そして、医療機関による「エンゲージメント」の度合いも、医療機関自身で選択することが可能で、シンプルなQ&Aコーナーを設定するだけでも良いし、包括的なケアマネージメント・プラットフォームとして活用することも出来る。
            世界最大の癌患者向けソーシャルネットワーク「Belong」

患者エンゲージメントは、効率的なケア提供や患者の満足度に大きく関係する、現代の医療における鍵となる概念だ。FDAは2018年6月、「患者中心の医薬品開発(Patient-Focused Drug Development)」の実現に向け、患者経験データや関連情報を患者や介護者から収集する方法や、それらデータや情報を意思決定に生かす方法についてガイダンス草案を発表した。また、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の傘下機関で、公的医療保険制度における革新的なサービス提供モデルと支払いシステムの開発および検証を担当するCMS Innovation Center(CMMI)も、患者エンゲージ型のケア提供を注力分野の1つに掲げている。

消費者向けのITサービスは患者エンゲージメントを媒介するものとして重要な役割を果たしている。スマホやウェアラブルのアプリには、ヘルスケアやウェルネスに関連するものが数多く存在するが、特に米国ではFDAから医療機器として承認されているものも数多くある。血圧や心拍数、睡眠状態をはじめ、心電図や超音波診断までもがスマホで可能な時代となり、消費者は普段気にする事の少なかった体の変化を簡単に知ることが出来るようになっている。患者にとって医療データはますます身近な存在になっている。デジタルヘルス技術の進展と相まって、医療における患者エンゲージメントは今後ますます推進されることになるだろう。

(了)


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