2023/03/09

デジタルヘルス討論会

現役臨床医によるオンライン座談会 【第6回】

ウェアラブル, 疾病管理・患者モニタリング, テレヘルス, 睡眠障害, 日本, デジタルセラピューティクス, 臨床医

睡眠とスリープテック【後編】

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(出所:Shutterstock)

現在、注目が高まっている「スリープテック」に興味を持つ先生方に集まってもらいました、現役臨床医によるオンライン座談会「睡眠とスリープテック」は今回の後編が最後となります。話題は、医療現場でのアプリの導入や認知行動療法等へと発展していきます。
(文中に、特定の商品やサービス名が出てまいりますが、個人の所感であり、効能を保証したり、特定の商品を推薦する意図はございません。また、当記事について特定企業や団体との利害関係はございません。)

参加医師:

ファシリテーター:LSMIP事務局スタッフ

(出所:Shutterstock)

医療現場でのアプリの導入

ファシリテーター: 近年、睡眠モニターとしてスリープテックを活用されている方が増えてきているようですが、意識の高い先生方はそれを上手く活用し、継続使用できると思います。しかし、一般の皆さんにはサポートがないと継続が難しいかもしれません。アプリ等での認知行動療法は全てそうだと思いますが、医療との連携でもっと活用してほしいと期待しています。アプリ等を医療現場に取り入れる動きは進んでいるでしょうか?(スリープテック以外でも結構です。)

玲奈先生:     認知行動療法のアプリ、私もとても気になっています。こういうアプリでしょうか。(デジタル認知行動療法アプリ「Awarefy」 株式会社Awarefy https://www.awarefy.app/)使ったことはありませんが、色々と応用出来そうですね。食事療法とか、透析患者の生活指導とか、ダイエットとか。

ねむるこ先生:   SAS(睡眠時無呼吸症候群)の患者さんで、CPAP(持続陽圧呼吸療法)のモニタリングのために、機種メーカーによっては専用のアプリをダウンロードしていただいていますね。

Lemon先生:      スリープテックではないですが、CureAppの高血圧アプリ(高血圧症治療において医師と患者を支援するアプリで世界初の薬事承認取得)*1が保険承認も取れて、非常に注目されていると思います。あとは、禁煙アプリも注目されていますね。

ゆっくり救急医先生:医師同士のやり取りのために「Join」(株式会社アルム) *2というアプリのサービスを使ったことがありますが、対患者はありません。でも、「Apple Watch Heart Study」というのを聞いたことがありますよ。 https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2021/2/1/28-77724/ (慶應義塾大学医学部 慶應義塾大学病院 「Apple Watchを利用した臨床研究を開始」 2021/02/01)
「Apple Watch Heart Study」では、睡眠中にApple Watchを装着し、起床後、研究アプリケーション「Heart Study AW」の質問票に答える、ということで、寝ている間の心電図解析だそうです。こういう研究をやりたいです。

ファシリテーター: 色々と情報をいただきありがとうございます。間もなくアプリの医療現場での利用が増えてくると期待しております。

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注目のスリープテックスタートアップ

ファシリテーター: それでは、睡眠関連のスタートアップで注目の企業様があれば教えていただけますでしょうか?

ねむるこ先生:   できてから結構経っていますが、スタンフォード西野先生の「ブレインスリープ」*3 は、布団とか枕とかちょっと気になりますね。あとは、筑波の柳沢先生の「S'UIMIN」*4 ですね。脳波のデバイスが簡単に装着できて簡易検査としての利用価値が高そうでした。

ゆっくり救急医先生:睡眠ウェアのスタートアップの「TENTIAL」*5 社さんの製品は、温熱効果のある繊維が用いられており寝ているときの快適さが高まります。

Lemon先生:      個人的には「エアウィーヴ」*6 が臨床研究としてエビデンスが示されているので、睡眠の質を改善とすると言われているものについて、同様にエビデンスを評価出来ればなぁと思っています。

玲奈先生:     「エアウィーヴ」はエビデンスがあるのですね!知りませんでした。そうですね。睡眠を改善すると主張されているものは数多ありますが、根拠が示せると良いですね。

ねむるこ先生:   私も「エアウィーヴ」ユーザーです。

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認知行動療法アプリと予防医学

玲奈先生:     個人的な興味で恐縮なのですが、認知行動療法アプリに話を戻してもよろしいでしょうか。私達医療者のプラクティスをアプリ等のプロダクトに落とし込む方法に興味があるのですが、大学等の機関を通じて、もしくは何らかの形で企業と繋がる以外の方法では難しいでしょ うか。LINEbotでも原始的なものはできそうですが、市井の医者が一人で思いつきでやれるほど簡単ではないと思っています。

ねむるこ先生:   それは、私も興味があります!バイオデザイン的なものですよね?

玲奈先生:     そうです、そうです。

ねむるこ先生:   スタンフォードの池野先生のヘルスケアイノベーションという本があり、その中に、名古屋大学保健学科からできたスタートアップ、PREVENT社の記事がありました。同社は、「Myscope」というサービスを提供しており、アプリは「Mystar」*7 と言います。流れは、Fitbitを用いて、睡眠、歩数、脈拍を、また減塩センサーで塩分摂取量をチェックする。これをスマホアプリとリンクできるようにして、学習教材の閲覧や服薬チェックなども盛り込んで、チャット相談もアプリで対応します。PREVENT社がそのデータを連携して、一人一人の健康プランを作成し、2週間毎に電話面談をするという流れになっています。どのような経緯でここまでできたのかという詳細はわからないですが、研究結果が元になっているようです。こういうのやりたいですね。

玲奈先生:     ありがとうございます!凄いですね。まさにこういうの良いですね。ここから得られるデータもお宝でしょうね。

ねむるこ先生:   こういう、すでにあるデバイス(FitbitやOura Ringなど)を用いた専門家による睡眠管理は保険診療内でのカバーは難しそうですし、外来と外来の間の管理として実地医療と産業の連携ができそうで参考になります。健常者にとっても、予防医学として、意識が高い方には受けるでしょうね。企業などでの睡眠向上での利益損失予防にも効果的かもです。スリープテック、利用価値高いです。

ファシリテーター: 先生の思いが伝わってきます。先生のような方と共にビジネスをしたい企業はたくさんあると思いますね。認知行動療法アプリは今後、日本で浸透すると思っています。
最近は保険会社などが、予防医学に力を入れていますね。保険診療のカバーはできなくても、治療や健康のためのサポートとしてデバイスやアプリが活用されることを期待しています。これは企業側のセールス努力も必要ですね、、、

玲奈先生:     民間の保険会社でそのような話は最近良く聞きますね。企業などでの睡眠向上での利益損失予防にも効果的かもです。産業医資格と相性が良さそうですね。 私は産業医持ってないですが…

ねむるこ先生:   そうなのです。(私は産業医持っています!)今、研究で、とある交通会社のドライバーの睡眠データをもらえないか交渉中です。

ゆっくり救急医先生:健常者への適用、予防的介入って非常に憧れますが、医者サイドがユーザーになるのは、最後の最後になりそうですよね・・・。

玲奈先生:     医師自身の健康もなんとかせんといかんですね。 最近何かで医師の平均的寿命70歳と見て衝撃を受けました。確かに医局名簿見ると若くして逝去している先生多い気がします

ファシリテーター: これは驚きます。お仕事がハードで、夜勤などがある事も影響しているのでしょうか?これは問題ですね。

ゆっくり救急医先生:え、、、70歳ですか。でもそれは仕方ないですね。むちゃくちゃな生活してる自覚はあるので…。スリープテックなどのテクノロジーを活用して宿命に少し抗ってみます(笑)。

ねむるこ先生:   怖いですね。ハードワーク、シフトタイムワークでもないオーバーナイトワークが横行していますしね・・・。断眠が多い影響でしょうか。断眠はアルツハイマーを増やす*8というのはききました。

玲奈先生:     断眠はアルツハイマーを増やすのですね。はじめて知りました。認知症の進行を抑制するエビデンスがあるのは運動療法だけですが、睡眠とも関係ありそうですね。ほんとに眠りは大事ですよね。若くても過労で亡くなり得ますからね。突然死で

ファシリテーター: 断眠はアルツハイマーを増やす、と言うのは私も知りませんでした。やはり質の良い睡眠が大切なのですね。それゆえに、スリープテックへの期待が高まりますね。皆様が注目していらっしゃるのがよくわかりました。

Lemon先生:      先生方のコメントを拝見して、ますます睡眠の重要性を認識しました。自分としては時差ボケ対策が差し迫った課題です・・・。これから保険診療から予防診療への動きは止められないと思います。引き続きよろしくお願いします。

(出所:Shutterstock)

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