2023/03/14
米国eHealthジャーナル第84号
FDA、Tidepoolの「Tidepool Loop」を承認
糖尿病, 疾病管理・患者モニタリング, 医療機器, ウェアラブル, 行政・規制ニュース, ジャーナル第84号, Tidepool
血糖管理を目的とした自動インスリン滴定アプリ
糖尿病管理のための次世代イノベーションにフォーカスするカリフォルニア州パロアルト拠点の非営利組織、Tidepoolは1月24日、6歳以上の1型糖尿病(T1D)患者における血糖管理を目的とした自動インスリン滴定アプリの「Tidepool Loop」が、510(k)経路でFDAから承認されたと発表した。
健康な人では、膵島のβ細胞から血中へ、少量のインスリンが絶えず分泌されている。これはインスリンの基礎分泌と呼ばれる。これとは別に、食後に血糖値が上昇すると、血中のブドウ糖量を一定に保とうとして、β細胞からインスリンが大量に分泌される。これは追加分泌と言われる。糖尿病患者におけるインスリン療法は、体の外からインスリンを補うことにより、健康な人の血中インスリンの変動をできるだけ忠実に再現することを目的とする。インスリンの投与に際しては、タイトレーション(滴定、至適用量設定)に注意する必要がある。タイトレーションが不適切だと低血糖に陥る恐れがあり、重篤な低血糖症は、振戦、発汗、動悸、視力障害を引き起こし、心臓もしくは脳に障害を与えることもある。
出典:Tidepool
従来、インスリンの適切な投与量は、患者の体質や重症度を見ながら医師が患者ごとに決定し、状態に応じて常時調整してきた。この医師の作業に代わって、患者に適切なインスリン用量を推奨するスマートフォン用アプリの開発が進んでおり、「Tidepool Loop」はそうしたアプリの1つである。
患者主導のプロジェクトとして開発が進められたTidepool Loopは、連動するApple Watchからのインスリン・デリバリーを可能にする初のアプリだという。Tidepool Loopのアルゴリズムは、それに対応した統合型持続グルコース測定器(iCGM)および代替コントローラー対応(ACE)インスリンポンプとの組み合わせでの使用が意図されており、iCGMの読み取り値とグルコース予測値に基づいて、基礎インスリンの供給を自動的に増加、減少、中断させることができる。また、グルコース値が事前に設定した閾値を超えると予測される場合には、補正追加インスリン注入(ボーラス)を推奨あるいは投与することが可能だ。
2013年に設立されたTidepoolは、糖尿病患者とその治療にあたるクリニック向けに、「Tidepool Web」や「Tidepool Mobile」、「Tidepool Uploader」をはじめとする、一連の糖尿病患者向け無料ソフトウェアツールを提供している。Tidepoolは2017年9月には、デジタルヘルス製品のための新規承認アプローチを検証するFDAのパイロットプログラム、「Pre-Cert Program」の参加組織に選出されている。Pre-Certは、FDAが2017年7月に策定した「Digital Health Innovation Action Plan」の柱となる取り組みで、FDAは、プログラムに関心を寄せた100社以上の中から、企業の規模や品質に関する実績、注力領域などを基準として、Tidepool のほか、Johnson & Johnson、Roche、Verily、Apple、Samsung、Fitbit、Pear Therapeutics、Phosphorusの8組織を選出した。
(了)
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